* * * * *

「…ん」

意識が浮上し、ゆっくりと瞳を開いた。怠い体を起こし、あたりを見渡す。

「ここ…何処?」

気がつけば丘の様な所に倒れていた。
確か私は湖に落ちて気を失ったはずだ。周りに人気は無く、誰かが助けてくれたとは考えられない。それに明らかに自分が元居た場所とは違う。

一体どういう事なのだろうと、覚醒しきっていない頭を必死に動かした。

赤い空気の様な物が漂い、夜の雰囲気を一層醸し出している。
不気味なような、でも決して嫌な訳では無い不思議な感覚。

…まさかそんな、小説の話じゃ有るまいし。
でもどう考えても元いた場所とは似ても似つかない。世界其のものが変わった様な…そんな感じだ。

「夢…じゃ、ないよね?これ。」

夢と考えるにあまりにも感覚がはっきりし過ぎている。夜特有の冷える空気が肌に感じられ、軽く身震いした。

そう言えば、湖に落ちた筈なのに体も濡れていない。全く持っておかしな状況だ。

「とにかく…どうにかしないと…」

不安になる心を何とか落ち着かせるように深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
ここが丘だからか、目の前に広がる街並み良く見渡せる。

一際目立つ大きな建物。淡く光を放っているそこが目に付いた。取り敢えず、あそこを目指せば迷う事は無いだろう。

明かりも付いている、きっと人が居るはずだ。
意を決して立ち上がり、大きな建物を見失わないように確認しながら歩みを進めて行った。