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「…あぁ、朝か…」
昨日は早めに眠りに付いた為か、わりと早く目が覚めた様だ。二度寝しようか迷ったが、せっかく目が覚めてしまったんだし…庭でも散歩しようかと起き上がる。
顔を洗って昨日とは別のクローゼットを開けた。ネグリジェ用のクローゼットの隣にもう1つクローゼットがあり、そこに普段用のドレスが入っている。
私にとっては普段用でも十分贅沢な物なんだけど…元の世界から着てくる私服はここでは馴染まない為、ここのドレスを借りるしかないのだ。十分有難いんだし、我侭は言えない。
可愛らしいデザインの物ばかりで、何度か着てはいるがやはり慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
なるべく落ち着いたドレスを選び、着た自分を見てはみるが似合っているとはとても思えない。はぁ…と一つ溜息を付いて、椅子に座り軽く髪を整える。
しっかりと桃色に染まり、腰まで伸びた髪。瞳も同様の桃色。暫くぶりに見たがメルヘンな見た目だなと笑ってしまう。
ここまで髪を伸ばした事は無く、ミーヤの様に上手く弄れる訳でも無い為整えて自然と流すだけにした。
もう一度鏡を見て変な所は無いか確認し、私は部屋を出た。
適当に庭でも彷徨いていようか…。
エントランスを出てふと、人の声が聞こえてそちらに目を向ける。
こんな時間に、何してるんだろう。何か金属がぶつかっている様な音もするし…。メイドさん達が仕事をしている音では無い。
向かって左右に塔が建っており、その左側から音が聞こえている。まだそこに行った事が無く、勝手に入っていいのか少し迷ってしまった。
気になるし…少しだけならいいかな。
軽く覗いてすぐ戻ろうと、塔の入口から少し顔を覗かせる。
「あ…!」
中では白い軍服に身を包んだ人とルイスさんが中央で剣を交えていた。
周りにも同じ服を着た騎士達がその様子を見ており、どうやら訓練中だったようだ。
ルイスさんと戦っている人…彼は初めて見る。
青い髪のとても綺麗な人だ。よく見ると彼の服のデザインだけ他の騎士達と少し違う。
無駄の無い動きは映画でも見ている様だ。
だがルイスさんも凄く強いのが見て分かる。多分二人とも互角なのだろう。動き1つ1つが洗礼されていてとても綺麗…。
攻撃を交わす度にふわりと舞う銀髪に、ほぉっと溜息が漏れる。
ルイスさんはいつも柔らかく笑ってるけど、あんな真剣な顔もするんだ…。
トクン…と脈打つ胸を軽く抑え、暫くルイスさんから目が離せなくなっていた。
「…ッく、僕の負けだよ」
ルイスさんが青い髪の人の剣を弾き、弾かれた方の彼は両手をヒラヒラと振りながら参りました〜と笑った。
「流石お二人だ!!」
「素晴らしい試合でしたよ!!」
ようやく勝敗が付き、周りの人達は拍手をしていた。
少し汗をかいた様で、ルイスさんは前髪をかき上げた。ドクンと先程より大きく胸が高鳴る。仕草が酷く色っぽくて目が離せない…。
私、どうしたんだろう…。
「…リリス?」
「っ!!」
声をかけられ、ハッとする。無意識にずっとルイスさんを見ていた様でパチッと目が合った。
「ごめんなさい!勝手に入ってしまって…っ」
怒られてしまうかと肩を竦める。
「全然大丈夫だよ。おはよう、今朝は早いね?」
使っていた剣を片付けて、何時もの様に柔らかな笑みをむけてくれる。
「目が覚めてしまって…。ここから音が聞こえたので気になりまして…」
良かった、取り敢えずお咎めはなさそうだ。密かにホッと胸を撫で下ろす。
「ルイスさん、凄いですね!かっこよかったです」
「え?…あはは、ありがとう。見ていたんだね」
照れたのだろうか、少しだけ頬を染める顔が可愛らしい。なんだか今日はルイスさん色んな顔が見れた気がする。
今日はツイてる、と嬉しくなる。

