* * * *

今日も普通に学校に行って帰ってくる。しっかり日も沈み空には満月が浮かんでいた。

鏡が有れば向こうの世界と行き来が出来るため、湖には行かずに窓の側に姿見を持ってきて満月を写す。

「これでいいのかな…」

軽く鏡に触れると、波紋の様に表面が波打ち指がスッと入っていく。
どうやら大丈夫そうだ。

一応戸締りなどは全て済ませてあるため準備は万端。さて、出発しよう。

ゆっくりと鏡の中に体を滑り込ませた。スルンと体が鏡の中に入り込む。

来た時同様、薄紫色の空間をゆっくり歩いていく。暫くすると先の方に光が見え始めた。
小走りでその光の方へ向かい通り抜けると、ふわりと体が浮く感覚がして意識が遠のいていった。



目を開けると、丁度お城の近くに出てきた様だ。

「えっと…こんばんは」

「これはリリス様、お帰りになられたのですね」

門の警備をしている人に声をかけると、王達がお待ちですよ。と中に通してくれた。そのまま真っ直ぐ王室に向かい、扉をノックする。

「入りない」

「失礼します、ダリウスさん…」

少し扉を開けて顔を覗かせると、ダリウスさんは驚いた様に目を丸くした後ニコリと笑った。

「お帰り、リリス。待っていたよ」

お帰り。その一言がじんわりと心を暖かくしてくれる。元の世界だと1人だった家で、勿論お帰りなんて言ってくれる人は居ない。

素直に嬉しいなと思った。

「ルイス達も、リリスの帰りを今か今かと待っておったよ。顔を見せておやり」

ルイスは部屋に居るだろうから。と部屋の場所を教えてもらい、その部屋に行って見ることにした。

…えっと、確かここを曲がってすぐだった筈…。角を曲がると一つだけ部屋があるので恐らくここだろう。

小さくノックすると、どうぞ。と声がかかる。間違いないルイスさんの声だ。

「失礼します…」

部屋に入るとルイスさんは仕事中だったようで、書類に目を通している所だった。

「お久しぶりです、ルイスさん。リリスです」

そう言うと書類に落としていた顔を上げ、ふわりと微笑む。

「お帰り、リリス。そろそろかなって思ってたよ」

書類を端に寄せルイスさんはデスクを離れソファに座る。さぁ、入って?と手招きし、自分の隣をポンポンと叩いていた。

「でも、お仕事中じゃ…」

「急ぎの物じゃ無いから大丈夫だよ。」

「…じゃあ」

お言葉に甘えて隣に座る。相変わらずとても綺麗な人だ。隣に感じる存在に、心臓は少しずつ鼓動を早めていく。
久しぶりに会ったから…緊張してるのだろうか。