今日は満月の晩…。

「綺麗な月…見に行こうかな…?」

ぼんやりと満月を眺めながら呟いた。
私の名前はリリス。

幼い頃に両親を亡くし、今は一人暮らしをしている。

しかし私には何故か両親の記憶や、幼い頃の記憶が殆ど無い。すっぽりと抜け落ちたように、何も思い出せないのだ。その為か、親がいなくて寂しいという感情を抱いた事もあまり無い。

親や親戚が居ない、という理由で学校などで不便は些かあったが、それも高校に上がればあまり気にならなくなった。

時刻は12時を回っているが、どうにも眠れそうになく、気晴らしにと私は外に出た。
明日も普通に学校なのだが、眠れないのだから仕方ない。
家のすぐ近くに湖がある。きっと其処でならもっと綺麗な満月が見れるだろう。

案の定、湖に到着すると其処には美しい光景が広がっていた。
雲一つ無い空にぽかんと浮かぶように佇む丸い光。それか水面に映し出されてゆらゆらと揺れている。

本当に綺麗――

水辺に近づき、そっと覗き込む。
月と共に映し出される自分の姿に、微かに顔を顰めた。

明らかに普通と言えない自分の容姿。
表現は悪いが、例えると血の様に赤い髪と瞳を持っていた。

「私の髪、何でこんな色なんだろう…」

そっと髪を摘み、ポツリと呟く。

私はれっきとした日本人の筈だ。
それなのに、この変わった容姿。名前も外国人の様だと随分前から思っていた。
どうして親はこんな名前を付けたのだろうか。何も覚えて居ないのだから、考えるだけ無駄だろうけど。


この容姿故か、周囲の人からは奇異の目を向けられる事が多かった。

ただ髪と目の色が他と違うだけなのに。自分に向けられる視線は何時も痛いものばかりで、心は鉛のように重くなってしまう。