エントランスを抜け、柔らかな芝生の感触を足に感じながら散歩をする様にウロウロする。
仄かに香るバラの甘い香りは心を落ち着かせてくれる。ふぅ…と小さく息を吐いた。
「リリス?おはよう」
「ルイスさん、おはようございます」
声をかけられ振り返ると、ルイスさんが庭園に降りてきていた。
ぺこりと頭を下げる。
「また此処に来ていたんだね?」
「はい、前に来た時に凄く気に入って…」
そう言うとルイスさんは嬉しそうに目を細めた。
「そうか、それは良かった。…そう言えば今日が帰る日だったね?」
「はい、満月の晩なので…」
何だか、凄く速く感じます。そう言って私は苦笑した。
「君に会えなくなるのは寂しいな…」
「わ…私もです!ルイスさんとこうして話しているのは、とても楽しいですから」
「ん?嬉しい事を言ってくれるね」
俺もだよ。と微笑みながら言われ、また鼓動が微かに速くなる。
最近の私はどうも変だ。こんな風にルイスさんの顔を見ると妙に心臓が煩く騒ぐ。
「さて…俺は父上に呼ばれているんだった。また後でね、リリス」
ポンとリリスの頭に手を乗せ、ルイスはエントランスを抜けていった。
ごく自然な動作に違和感すら感じる暇が無かった。頭を撫でられた…たったそれだけの事なのに、凄く嬉しい。無意識に頬が緩み、笑みを浮かべていた。

