―――――
あれから幾日か経ち、今日は満月の日だ。
やはり月の満ち欠けの速さがここの世界では速く、少し違和感を感じる。
「リリス様、今日お帰りになるんですよね…」
しゅんと肩を落としながら、ミーヤは私の髪を慣れた手付きで結い上げている。その姿が可愛らしく、リリスは密かに笑みを溢した。
「うん、また戻ってくるから…」
ね?と首だけ振り返ってミーヤを見上げる。
ここ数日で彼女とも話しやすくなり、ミーヤに敬語は要らないと言われた。
ならばミーヤも、少し私より年上だがそれ程年も変わらないのだから敬語は要らない。と言ったのだが、やはりメイドとしてそれは出来ないと断られてしまった。
そういう所はしっかりしてるんだなぁ…。
「寂しくなります…次の満月の晩が待ち遠しくて」
「私もだよ?何だか寂しくなる…」
折角話が出来る友達が出来たと思ったのだが、月の周期が早いのだから仕方ない。
いつまでも学校を無断で欠席していたら、流石に私が行方不明になった。とも成りかねない。
一度戻ってやる事はやらねば…。
つまらない生活に戻るのは憂鬱で仕方ない。
「お帰りになる日をお待ちしていますね!」
「うん、ありがとう。すぐ帰ってくるよ」
こんな他愛ない話をする事がこんなに楽しいなんて知らなかった。どちらかと言うと、人と関わることも自分からする方では無かったし。
「ミーヤはこれから仕事だよね?私はその辺で時間潰すから、仕事に戻って?」
彼女も暇な訳ではないのだ、いつまでも私が引き留めてはいけない。
「え…えぇ、そうですね。もう少しゆっくりお話していたかったのですが…」
申し訳ありません…と眉を下げながら言われ、私は首を振る。
「帰るのは夜だし、また後で会えるよ。だからそんな顔しないで?」
「えぇ…そうですね。ではリリス様、また後程…」
未だに肩を落としている彼女を軽く手を振りながら見送る。
さて…私も暇を持て余してしまうな。
前にルイスさんに教えて貰った庭園にでも行こうか。慣れないドレスの裾を軽く整え、部屋を出てエントランスに向かった。

