「少しいいですか?」
ビリアさんが女の子の額にもう一度触れ、体の様子を看始める。
「...信じられません」
「あの..娘は?」
「治っているのです!綺麗に、初めから病気になどかかっていなかった様に…」
「本当ですか!?」
治った?!嘘っ…私が治したって事…?
「ありがとうございます!!貴方のおかげで娘は!!」
泣きながら、お母さんにお礼を言われ何度も頭を下げられた。
良かった、あの子は助かったんだ…。
「...この髪と瞳って...?」
改めて、女の子のお母さんが私をじっくり見始めた。
あっ…!と思った時には既に遅かった。
「まさか!女神様!?」
「いえっ、私は…っ」。
「いいえ!さっきの不思議な力!この桃色の瞳と髪!間違いないですわ!」
「...リリス、そろそろ帰ろうか?」
ルイスさんが話を中断してくれた。
助かった…と溜息を付く。
「本当にありがとうございます!女神様!」
「いえ、私はこれで...」
いそいそと家を出て馬車に乗り込んだ。
そのまま真っ直ぐお城へと向かって行く。
「あの、ビリアさん。さっきのって何だったんでしょうか…?」
「きっとあれが女神の力なんでしょう。娘さんが助かってよかったですね」
「はい、そうですね...」
助かったのはいいけど…自分自身戸惑いを隠せなかった。女神なんて自覚も持てず、話も半信半疑な状態だった中起こった出来事。
確かに女の子が助かって喜ばしい事なのだが、嫌でも自分は普通の人じゃ無いのだと実感させられた様だった。
「この噂が広まらないと良いんだが…」
「ルイスさん...」
「そうですね、不安な所ももあります...」
私…もしかして余計な事をしたかも…。
また気持ちが重く沈みそうだ。
「リリス、そんな顔をしてはいけませんよ?貴方のお陰で女の子は助かったんですから」
「…はい」
実感がわかないのもそうだが、いまいち喜びにくくて曖昧な笑みを浮かべてしまった。
城に着き、リリスとルイスは先に馬車を降りる。
「ビリア、今日はありがとう」
「いいえ、ルイス様。失礼致しますよ」
ビリアさんが乗っている馬車を見送り、私達も城の中へ入った。
「驚いたな、君にこんなちからがあったなんて」
「あの…私」
勿論誰かの力になれた事は喜ばしい事だ。だが些かばかり恐怖もある。普通から離れて、またどんどん異常になってしまう。
「リリス、怖いかい?」
ルイスは歩みを止め、少し屈んでリリスの瞳を見つめた。
「…ぇ?」
「いきなり知らない所に一人で来てしまって、ただでさえ不安だろうに…。力の事も怖く思ってしまうかもしれないね」
その通りだ、正直気持ちはやはり追いつかない。不安もあるし、何より怖いのだ。
「ごめんね、何もしてあげられなくて…。でも何か力になれる事もあるかもしれない、いつでも話は聞いてあげられるから…」
だから、そんな目をしないで?
そう言ってルイスはリリスの頬に手を添える。
トクン…と微かに鼓動が早くなる。
「笑っている方が、君はずっと可愛い」
そう満面の笑みを浮かべて言われ、心が暖かくなる。本当に、この人は優しい…。
「はい…有難うございます」
自然と引き出された笑顔を向け、ルイスさんに微笑みかけた。彼の優しさに、何だか救われた気がした。