「さぁ、着きましたよ。この家です」

ビリアさんは馬車を降りて、家の扉をノックする。
すぐに扉が開かれ、中から母親らしき女性が出てきた。

「あぁ!ビリア様!!早く娘を見てやってください!!」

女の人が泣きそうな顔をしながら、ビリアさんにしがみ付いた。

「落ち着いてください、すぐに様子を見ますから。大丈夫ですよ」

落ち着いた声で、母親であろう女の人を宥めながら家の中へと進んでいく。
ビリアさんの随分と慣れた様子に感心した。
私とルイスさんは邪魔にならない様に、ビリアさんの後ろを付いて行った。

「この子なんです...お医者様にも見せたのですが原因が分からないらしくて…」

寝室のベッドには、荒い息遣いをして青白い顔をした女の子が眠っていた。
かわいそうに、凄く辛そうだ...。

「少し見てみましょう」

そっと女の子の額に触れて、様子を見ているビリアさん。頬や首筋に触れたり、脈を測っているのか腕に軽く手を添えたりしている。
それを私達は静かに見ていた。

「これは...」

顔をゆがめて、ビリアさんは呟いた。
眉間にしわがよっている...。

「ビリアさん、どうしたんですか?」

尋ねてみると、ビリアさんは悲しそうな顔をして眉を寄せる。

「...まさかっ!」

もう、手遅れとか言わないよね…?

「病状が悪化しています...此処まで来たら私にはどうにも…」

「そんなっ!!」

女の子のお母さんが目を見開いて叫んだ。

「お願いします!!どうかこの子を助けてください!!大事な一人娘なんです!お願いします!!」

狂ったように、必死にビリアさんにしがみついて涙を流しながら頭を下げている。今にも土下座をしてしまいそうな勢いだ。
その様子を見てると、胸が酷く痛む。

こんなにまだ小さい子なのに。多分3,4歳くらいだと思う。
ルイスさんも、ビリアさんと一緒にお母さんを宥めている。

「私には…何も出来ないのかな?」

そっと女の子の額に触る。その熱さに驚いた。
こんなに青白い肌をしているのに、凄い熱。

「…お願い、治って…お母さんが可哀想だよ」

女の子の額を撫でながら、そう呟いた。
私にはよく分からないが、両親と離れ離れになるのはとても辛い事だと思う。
如何にか助けてあげたい。

そう思った瞬間、私の手元が光りだした。
女の子の体が淡い光に包まれる。

「なっ!?なにこれっ…!!」

どうなってるの?!何かしてしまったんだろうか。
「リリス!何をしてるんだ?!」

その場にいた全員が目を疑った――。
ふわりと私の髪が靡いて、被っていたフードが脱げる。

光が消えると、先程まで顔色の悪かった女の子の頬がほんのり赤みを帯びてきた。
息遣いも穏やかになって来るのが見て取れる。