「なら問題ない。どうせ自分の為に悪いと思っていたんだろう?」
「…っ」
図星を付かれてしまい言葉を飲み込む。
「君は本当に優しい子だね。たまには人に頼ってもいいんだよ?」
「...え?」
「頼ってくれるのなら、俺は喜んで君の力になるよ?」
「...っ!」
ドクっと胸が高鳴った。
ふわりと笑うルイスさんがとても綺麗で…。
かけられる言葉が優しく、とても暖かくて…。
昨日会ったばかりで、他人同然な私に此処まで優しくしてくれる彼に感謝の気持ちでいっぱいになった。
「さぁ、城の案内をするよ。行こう」
「はい、お願いします」
お城はどの様になって居るのだろう、と言う好奇心も無いと言えば嘘になる。
踊る心を落ち着かせ、リリスはルイスの後を追った。
…広い…。
お城ってこんなに広いんだ。外から見てもあれだけ大きかったんだ、これだけ広いのも当然か…。
ほとんどの場所は回ったけど、少し疲れた…。
「ん?疲れた?」
「…ぃえ…はい。」
嘘つくのはやめよう。本当に疲れた。
「なら、庭園に行こうか?」
「庭園?」
そんな所もあるんだ。本当に色んな所があるんだなぁ…。
数え切れない部屋や広い応接間。確かダンスホールもあったっけ。私が居た所とは世界が違うのだとまざまざと見せられた気がした。
「きっと気に入るよ」
楽しみにしてて、と私に笑いかける。
どんな所なんだろう。と先程まで疲れていたのが嘘の様に足取りが軽くなった。
「ここが庭園だよ」
「すごい、綺麗…!」
城の中央付近にあるエントランスを抜け、鮮やかな芝生に下りて景色を見渡す。
そこには大きな噴水があり、周りには沢山のバラが咲き乱れていた。
「気に入ってくれたみたいだね」
「はい!こんなに綺麗な所があったんですね」
真っ赤なバラに視線を奪われ、つい魅入ってしまう。
「まだ時間もあるし、ゆっくり見てくるといいよ」
ルイスさんの言葉に甘えて、噴水の縁にドレスが汚れないように座ったり。バラを眺めながらウロウロしたりと昼までの時間を過ごした。
ルイスさんと談笑していると、いつの間にか時間が経っていたようだ。
「リリス、そろそろ戻ろうか。ビリアが来る時間だ」
「ぁ、もうお昼なんですね」
夢中になっていて、時間が経つのを忘れてしまっていた。今まで経験した事のないような穏やかな時間はとても楽しかった。
少し名残惜しいが、我が儘を言うわけにはいかない。庭園を後にして2人はダリウスの所へ戻り、部屋に顔を出した。
「父上、ビリアはもう到着しましたか?」
「おぉ、丁度良かった。今ついたところだよ」
「こんにちは、ビリア。わざわざ来てくれてありがとう。」
「これはルイス様、お久しぶりですね」
優しそうなおばあちゃんの声が聞こえる。
そっとルイスさんの後ろから顔を覗かせた。
ダリウスさんの隣には、声と同じ様に優しそうなお婆ちゃんが立っていた。
「この方がお話のお嬢様ですね?」
「そうなのだ、まだあの事は話していないが…」

