坂吉先輩との接触後、あたしは走っていた。何故かは分からないが、無性に家に帰りたくなったのだ。



あたしは基本的に、大体の人とは仲良くなれるし、自分自身もあまり嫌われた事もない。それに、誰かを嫌ったりだとか、苦手意識を持ったりする事も少ない。



けど、



坂吉先輩は、



気味が悪いとか、根暗オタクなんて事は思わないけど、あんまり関わりたくはないかもしれない。





―――ポロッ、





「あっ、」



鞄の中に入れていたはずのハンカチが、ポロリと落ちてしまった。そのまま風にふわっと飛ばされる。



「あーっ、だめだめ!」



ふわり、ふわりと地面を転がるように飛ばされるハンカチ。



やっとハンカチに追いついた所で、ふと気が付いた。



鞄のチャックは閉まったままだし、風なんて一度も吹いていない。








キキィーーーッッ!!!





その音が聞こえたと同時に、全ての動きがスローモーションに変わった。



振り向いた先には、一台のトラックがブレーキをかけながら自分に突っ込んで来ている。運転手のおじさんも、凄く驚いた顔をしている。真っ青を通り越して真っ白になってるし。はは、ウケる。



それにしても、僅か数秒間の間に、こんなに思考がフル回転してるって事はさ、



つまり、そういうこと?



あたし、もしかして、



そう考えた瞬間、あたしの体が飛んだ。