あれから、興奮しっぱなしのミッチーを連れて教室に入る。
移動している間に少し落ち着いたようで、おとなしく席に座っている。若干、鼻息は荒いが、ミッチーは美人だから大丈夫。鼻の穴も広がってるけど、ミッチーは美人だから大丈夫。ミッチー美人で良かったね!
「あのねミッチー、あたしハンカチ落としたのを拾ってもらっただけなの」
「………えっ!そうなの?」
たったコレだけの事を伝えるのに、何故こんなに疲れてしまったんだろう。
「うん、良い人っぽかったけど、何かあるの?」
「はぁぁ、ありまくりよ」
ため息を吐かれてしまったが、今度は興奮せずに教えてくれるらしい。ちゃんと聞いておこう。だって流行遅れは嫌だもん。
「あの人は坂吉先輩っていって、一個上の先輩なんだけど……」
坂吉 弥生
(さかよし やよい)
黒冬学園の二年生で、校内で一、二を争うほどの知名度の持ち主である。
いつも本を読んでいて、友人が一人もいないため、根暗と言われている。
そして、よく独り言を言ったり、視線がどこを見てるかわからないからと気味悪がられている。
ちなみに、読んでいる本はオカルト系が大半を占め、オカルトオタクと言われているのだ。
「ふーん」
「ふーんってあんた、気味悪くないの?」
思っていたより普通だ。もっとスゴい人かと思っていた。暴走族の頭とか、ヤクザの跡取り息子とか、魔の生徒会役員とか……
「でも普通だったよ」
「普通じゃないから言ってんの!」
良い人そうだったけどなー。
……という言葉はゴクンと飲み込んだ。言えばきっと、ミッチーはまた騒ぎ出すだろうから。