「ニコリン、あんた知らないの?」

「え、何を?」

「だから、坂吉先輩のこと」



どうやら有名な先輩らしい。ヤバいよこれ。もしかしてあたし流行遅れってヤツじゃないの?



坂吉……うーん、聞いたことはないし、分かんない。坂吉先輩って誰だよ、マジで知らないよ。昨日数学の先生を「お母さん」って言い間違えた隣の席の又吉君なら知ってるけど。



「もしかして、話し掛けられたの?うっそニコリン無事?!何かされなかった?!」

「何かって、ハンカチを……」

「ハンカチ盗られたの?!最近買ったあの可愛いやつ?うわ最低!!」

「いや、だから」

「ホント何なの!あの根暗オタク!」



誰かミッチーを止めてくれ。



話が進まないよミッチー。



「マジで気を付けなよ!目付けられたんじゃないの?」

「あのさ、話が見えな……」

「ちょっとハンカチ貸して!何かされてないか見てあげる!ほら貸して!!」



誰か止めてー、ミッチーを止めてー。



先ほどから、坂吉先輩に対して過敏な反応をするミッチー。一体何者なんだ、あの坂吉先輩って人は。