校門をくぐり抜け、下駄箱へと向かう。そういえば、そろそろ上履きを洗わないとニオイがヤバい気がする。



「ちょっといい?」



自分の上履きのニオイを想像し、ブルッと身震いしていたら、背後から声を掛けられる。聞いたことがない声だ。



「あ、はい。なんですか?」



振り返って見ると、やはり見たことのない人だった。同じ学年の子は全員知っているから、先輩かな?多分。



「これ、落ちてたよ」



先輩(仮)の手には、先ほど紹介した“安くて可愛いハンカチ”が握られている。



どうやら、いつの間にか落としていたらしい。



「ありがとうございます!わざわざ拾って届けてくれたんですね!」

「うーん、まあそんなところ」



自然な茶髪で、スラリと高めの身長。そこそこのイケメンという事もあり、だんだん彼が輝いて見えてきた。そりゃあ優しい人はポイント高いよ!



「じゃあ、……気を付けてね」

「はい!ありがとうございました!」



去っていく先輩(仮)を見つめ、笑理はハンカチをポケットにしまう。



こういうベタな出会いから始まる恋なんてのもいいかも!っていうか、あの人の名前も知らないや。



「ニコリンおっはー!」

「あ、ミッチーおはよ!タイミングばっちりだよ」

「?何のこと?」



彼女は、

三木 知世恵
(みき ちよえ)



中学校からの仲で、一番の親友といったところだ。ちなみに、ふんわりボブの美人である。決して羨ましいなどとは思っていない。思ったこともない。美人チクショウなんて一度も思ったことはない。



「あのさ、あの人知ってる?」



あたしは、そんな美人な彼女から彼の名前を聞くべく、まだ視界に入っている先輩(仮)を指差した。