ゆびきりに願いを込めて

「すみません、大丈夫ですか!?」

病院ではお静かに、という決まりを医師である自分自身が忘れていた。
声を出してからはっとするが時既に遅し、だ。

少女は絞り出したような声で小さく

「大丈夫です…」

と答える。

しかし痛みで口元が引き攣り、なおかつそう言いながら自分で立てそうにもなかった。

…大丈夫か、などと聞いた自分が馬鹿だった。

とりあえず、倒れたままの点滴スタンドを起こし、彼女が立てるようになるのを待つことにした。

しだいに、彼女の表情も強張った身体も少し和らいでくる。
それを見計らって声を掛けた。

「本当にすみません、病室まで送ります」

「いや…あの、一人で…」

「送ります。俺、これでも小児科の医者だから」

少女の言葉を遮って、有無を言わせない口調で強く言った。

「ごめんなさい。じゃあ、お願いします」

「それは俺の台詞」

少女が立ち上がるのに手を貸して、
二人は手を取って病棟へと向かった。