晴れ渡った青空に、悲鳴が轟く。

 その声に木の枝で羽を休めていた鳥達が一斉に飛び立ち、辺りが騒然となる。

 しかし、それ以上の反応はなかった。

 悲鳴が聞こえる範囲にいた人達は平然とした表情を浮かべいつもの出来事のように振舞うが、中には溜息をつく者もおり一部の人間には影響を与えていた。

 その影響は、可愛らしいものではない。

 時として神経をすり減らしストレスの原因となってしまうが、相手は重要な部分に気付いていない。

 だからこそ悲鳴を上げ、迷惑をかけていた。

「カイル、来て!」

 悲鳴に続き、決まってこの名前が呼ばれる。名前を呼ばれた相手もこのことはわかっているので、特に反応を見せることはない。

 ただ無表情のまま声が聞こえた方向に向かい、愚痴を言う。

 それも、嫌味たっぷりの毒吐き。相手も只者ではない。その毒吐きに対して、毒で応戦する。

 だが、勝敗は最初から決まっていた。呼ぶ側が負けで、カイルと呼ばれた人物の方が強い。

 それを見事に証明したのが、力関係。どう足掻いたところで、勝つことはできない。

 何故なら、相手は女性に生まれながら女性に見えない人物であった。それもシスターとは、驚きである。

 一般的にシスターのイメージは品があり清楚が漂う人物と思われているが、彼女は違っていた。

 イメージを見事にぶち壊す暴走シスターであり、時折物品を粉砕しては泣き喚いている。

「どうしたの?」

「見てよ」

「ああ、やったね」

「そう、やっちゃったの」

 何かを訴えかけてくるように、瞳を輝かす。そして両手を胸元で組み悲劇のヒロインを演じるが、カイルは特に反応を見せない。

 ただ「何?」と、返事を返し、相手からの答えを待つ。

「もう、鈍い!」

「別に、鈍くはないよ。セレーネが言いたいことがわかるから、何も言わないんだ。嫌だよ。手伝うのは」

「なんだ、面白くない」

 気付かれていたことに、セレーネは舌打ちをしていた。

 それはシスターとしてはあるまじき行為で、それも年頃の女の子がやっているのだから、恥ずかしい。

 それに、聖職者としての威厳が感じられない。