シスター奮闘記


「まあ、頑張りなよ」

「当たり前よ」

 胸を張り、自信満々のセレーネ。

 その自信は、一体どこから来るのか悩む。そして思うのは、実技試験をどう手伝えばいいのか。

 試験会場は、見習いシスター以外立ち入り禁止である。

「ねえ、セレーネ」

「何?」

「あのさ……いや、頑張ってね」

「何よ、改めて」

 カイルは、あえて黙っておくことにする。

 ズルをして合格するのはいけないことで、世の中の厳しさを知らなければ成長に繋がらない。

 カイルはセレーネに見えないように、苦笑いをする。

「まあ、いいか」

 どんな結果になろうと、カイトには関係なかった。


◇◆◇◆◇◆


「ほら、遅い!」

 二人は、実施試験が開かれる建物に向かう。渡り廊下で繋がっているのは本館と別館。

 別館は、主にシスター達の宿泊場所。

 本館は、教会の仕事など全般を行う場所となっている。

 この建物は地方に点在する教会を統括する支部となっているので、思った以上に大きな敷地を有している。

 それに比例して、見習いと正式なシスターの数は多い。

 また今日は、年に二度行われる面接日。

 さらに人口密度が増え、いつもと違い賑やかな雰囲気に包まれている。

「張り切りすぎて、落ちても知らないから」

「受ける前から、縁起でもないこと言わない」

「だって、本当のことじゃない」

「煩い! だって」

 其処で、言葉が止まる。次の瞬間、セレーネの顔が青ざめていく。

 何か悪いものを見てしまったのだろう、カイトはそれを確認するかのように振り返ると納得する。

 其処には、試験官が立っていたのだ。

「シスターたる者、大声を上げてはいけないと申したと思いますが」

「は、はい。よく、覚えております」

「でしたら何故、大声を発していたのですか?」

「そ、それは……」