寸前で、それは免れた。だが、もし刺さっていたら――それは恐ろしいので、想像はできない。
自身が行った事実に、セレーネは顔面蒼白であった。流石に今回のことは、言い訳はできない。
何より感情を爆発させなければ、このようなことは起こらなかった。
しかし、後悔は先に立たない。
「これ、使わないと」
「怒っていないの?」
「怒る? 今更、聞くような問題だとは思わないけど。そう思うのなら、日頃から迷惑をかけない」
カイルは力任せに包丁を抜くと、それをセレーネに手渡す。
そして自身は、キャベツをどのように使えばいいか考え込む。このまま、保存しておくわけにはいかない。
包丁が刺さった箇所から腐っていくので早めに食べないといけないのだが、良い調理方法が見つからない。
それなら、千切りにしてドレッシングをかけて食べてしまう。
何とも楽な調理方法であったが、今のところそれしか考えられない。
油で炒めて食べるという方法もあったが、他の料理で油を使用していた。
十代後半のカイルとセレーネであったら油料理が多くてもいいだろうが、ザレイの年齢では、油の摂取は控えた方がいい。
それにそのようないい加減な料理は、セレーネと一緒だ。
「私、何処かへ行った方いい?」
「何で」
「邪魔だと思ったから」
「そうだね。邪魔だよ」
「ほら!」
先程の殺人事件未遂を忘れてしまったのか、大声を張り上げ包丁を振り回した。
どうやらセレーネは、自分に都合が悪いことを忘れてしまうようだ。
今回の件で知った、セレーネの性格。
だが、喜べる内容ではなかった。このままでは、本当に殺されてしまう。
たとえそれが故意でなかろうと、カイルには堪ったものではない。
素早い動きで振り回される包丁から逃れると、セレーネの手首を掴む。
そして包丁を奪い取ると、調理場から追い出す――もとい叩き出した。
「二度と、入ってくるな」
「そ、そんな……」
まさか調理中に命を奪われそうになるとは、普通は思いもしない。
それも相手がシスターというのだから、考えられない。
カイルはセレーネを追い出すと、新しく加わった一品「キャベツの千切りサラダ」を、作りはじめた。


