【side健人】

はぁ…。今日も優奈の周りにたかる男どもを
追い払った。あいつら、こりねぇーな。
まったく…。俺が助けてやんねーと、あいつ何されるか分かんねぇー。
だから俺が守る。

｢ねぇねぇ、嵯峨くん！｣

｢なに。｣

｢この前ノート貸してくれてありがとう。はい。｣

｢あー。どういたしまして。｣

よく、俺にノートを借りにくる。

名前…なんだっけ？

まぁ、いいか。



放課後。

俺は借りてた本を返しに図書室へ向かった。

図書室はいつものように、誰もいない。

俺は本を返し、優奈の待ってる下駄箱まで行こうとした。

図書室を出ようとしたところで、俺は中に入ってこようとした女子とぶつかった。

｢わっ！嵯峨くん！あっ、ご、ごめんなさい！｣

あ、数学のノートを貸した女子。
でもやっぱ、名前は思い出せない。

｢こっちこそごめん。怪我は？｣

｢大丈夫…。｣

｢なら良かった。｣

そう言って俺は、また下駄箱に向かおうとした。
だけど、

｢あっ、あの！｣

呼び止めらた。

｢なに？｣

｢あ、えっと…。私、嵯峨くんが好きです。｣

｢俺、彼女いるんだけど。｣

｢うん。遠山さんだよね。知ってる。でも遠山さんっていつも男子に囲まれてて笑ってるじゃん。｣

｢だから何？｣

｢遠山さんって本当に嵯峨くんが好きなのかな。私は、私の方が嵯峨くんの事好きだと思う。｣

｢何言ってんのか全然分かんないんだけど。｣

何がしたいのかさっぱりだ。

俺は早く優奈の所に行きたいのに。

｢とりあえず、ごめん。俺は優奈が好きだから。｣

｢…｣

｢じゃあ、｣

下駄箱に向かって歩き出す。

｢ちょっと待って！｣

また呼び止められた。
俺はこの時、振り返らなきゃよかったんだ。

いきなり、首に手を回されて…そして…。

｢…っ！｣

…キス…。

俺は一瞬固まった。なんだよ。なんだんだよ。

俺は無理矢理女子から離れた。

離れたときに気付いた。

…優奈。

涙を流しながら俺達を見つめる優奈。

…見られた？

誤解を解こうと俺は優奈の方に近付いた。

俺が近付いている事に気が付いた優奈は、その場から逃げ出した。