ずいぶんと歩いてから、彼女は、大きな赤いお城のような家の前で、ようやく、香織の手を放した。


「…あなたの家ですか?」

「違うよ、私のじゃない。」

そういうと、彼女はその大きな赤い家の門を開けて入っていった。

彼女が門を開けたままにしたので、香織は、

入っていいんだな、

と思い、彼女の後を、ついていった。

もう、雨はすっかりやんでいた。

門を抜けると、いろんな花が目いっぱい咲いていて、晴れていたらどんなに綺麗だろうな、と香織は思った。

でも、水滴がついてきらきら光って、今だって十分綺麗だな、とも思った。