「人を、待とうと思ったんだけど、こんな雨じゃ、来ないかなあ」

すこし、寂しそうに話すと、ゆっくり立ち上がり、香織の手をつかみ、そのまま黙って歩き出した。

香織は、その時、少し冷静になって、置き去りにしたカバンのことを思い出したけれど、

まぁいっか、誰もとったりしないだろうし、帰りに取りに行こう、

と考え出て、彼女と一緒に歩き出した。