あいつの影


その出会いは奇跡だった。

「うわ!やばいじゃん!遅刻するっ!
なんで起こしてくれないの⁉︎」
あたし、三浦 サク。今日から高校1年生なんだけど、こんな日に限って寝坊したんだよねー…

楽しみすぎて寝れないとか、小学生並だよ…

「あんた、起こしても起きなかったじゃない!あとちょっとなら大丈夫とか言って!」
「そんなこと言った記憶ないよ!
朝ごはん食べてるヒマないから、
いってきまーす!」

そう言ってあたしは勢いよく家をとびだす。
初日から遅刻とか怒られるんだろうな…
はぁー…

ため息をつきながら早足で歩いていると
後ろからチリンチリンと自転車に鳴らされた。

「あ、すいません。」
あたしは端に寄る。

「あれ、同じ制服じゃん?あんたも
第一高校?」

「そうだけど…」
あたしは、急いでたから少しでも、早く学校に行きたかった。
誰だろう?不思議に思ってると、
「乗るか?」
「え?」

「そんなトロトロ歩いてたら間に合わねぇだろ?後ろ乗れよ。」

その人は見た目とちがって本当に優しかった。

見た目は、明るい茶髪に耳にピアスがあいている。整っている顔はすごくキレイだった。でも、どっちかというと、少し怖そうだった。

そんなことを考えていると
「早くしねぇと遅刻するぞ。
早く乗れよ。」

あたしはその言葉に甘えることにした。
初日から遅刻はしたくなかったからね。

「ありがとうございます。」

「おぅ!まかせとけ!」

そういって、勢いよくこぎ出した。

「あんた、名前なんてゆーの?」
名前を聞かれた。

「三浦 サクだけど…
そっちは?」

「俺は、松井 レオだ。」

あたしは、名前と見た目がしっくりくるなぁと思っていた。

そのあとは、2人共一言も話さなかった。

学校が見えてきた!
よかった、ギリギリ遅刻せずにすんだ…

「ほらよ。着いたぜ。」
「ありがとう、松井くん。」

「レオでいい。じゃあな。」

そういって、立ち去ってしまった。
レオでいい、だって。
まぁ、カッコよかったのは認めるかな?

あ、早くいかないとチャイムなる!
あたしは急いで自分のクラスを確認し、
1組へと急いだ。

教室につくと、ザワザワしてる教室。
あたしが自分の席に着くと隣から、おはようと声が聞こえた。

見ると、とても可愛い感じの女の子だった。

「おはよー。ギリギリセーフだね!
あたしは、持田 アキだよ。
アキって呼んでねー!」
そう、笑顔で言うアキは本当に可愛い。

「あたしは、三浦 サクだよ。
サクでいいよ。よろしく!」

お互いに自己紹介をし終わると、先生が教室にはいってきた。

「早く廊下に並んでー」

あたしとアキは廊下に並び体育館に向かった。

「え〜、〜であるからして…」

やはり、校長の話は長い。
眠たくなってくる。
隣でアキもウトウトしている。

あたしは、他の事を考えれば早く感じるかなーと思って隣の席の子を考えていた。

あたしの左隣はアキだけど、右隣には
だれも座っていなかった。
誰が座るんだろうなぁー。と考えていると、校長の話は終わっていた。


「あー、長かったねー!疲れたよ」
「そだね。でも、アキ途中寝てたじゃん!」
話しながら教室へ帰った。

HRが始まって、少しした時、
「遅れてすみませーん」

声がした。
見ると朝乗せてもらったレオだった。

あたしが見ていると、視線に気付いたようで、ニコッとわらっていた。

「初日から遅刻か、松井。
早く席に座りなさい。」

「はーい」

そう、返事をしてあたしの隣に座る。
ここはレオの席だったんだなー。

「サク、間に合ったんだね?」
急に名前を呼ばれて、ドキッとした。

「朝はありがとう。レオのおかげで間に合ったよ。
でも、なんでこんなにおそかったの?」

「式めんどいから、学校探検してた!」

と、人懐っこい笑顔で笑う。

ドキッ…

…ん?
なんだ、今のドキッって?
気のせいだよね?

うん。そう思うことにしよう。