「申し訳ないですけど、私は芸能方面は興味ないですから。」
そいうと、私は立ちあがった。
こういうタイプはしつこいから、はっきり断って素っ気ない態度をとるのがいい。
だけど。
「興味ないって・・・本当は、君のバックグラウンドが不安だからでしょう?」
いつもの展開とは、ちがうパターンになった。
私の一番触れられたくない部分を突いてきたのだ。
でも、下手に口を開いて、不利なことを言ってしまうといけないから、私はただ黙って相手を見つめた。
何も答えない私に焦れたのか、片岡さんは私を安心させるためか、にっこりとほほ笑んだ。
だけど、その笑顔は嘘くささが漂うもので、嫌悪感しか感じなかった。
そして、言葉は続けられた。
「大丈夫。君のお母さんが未婚で君を産んで、銀座の高級クラブのママさんまでになったっていうのは、セクシーグラビア路線ではプラスになると思うし。それに、お父さんがいいよねぇ、元AV男優のクラブのマネージャーなんて・・・話題性バッチリじゃない?」
騒がしかったカフェが、シン、と静かになった。
気が付くと、和田君が片岡さんにつかみかかっていて。
「おいっ、いい加減なこと言うなっ!!」
「嘘じゃないってー、情報源ちゃんとしてるんだって!!ねぇ、東野さん?」
東野という名前に、ハッとして振り返ると。
ニヤニヤ笑いながらこちらを見ている彼女がいた。
今日もツケマが目立つ。

