深夜に、ジローの実家について、挨拶をして。
翌日、6時に叩き起こされ、例のごとく朝食をむりやり食べさせられ。
現在、早朝7時半・・・この後、ジローのご両親のお墓参りを済ませて帰途につく。
今日は、16時からジローがどうしても外せないフォーラムがあって、急いで東京に戻らないといけないのだ。
って、いうか、無計画にもほどがある。
いきなり、昨日・・・怒りだしたかと思えば・・・車に乗せられ・・・無言で高速に乗り。
着いたところが、実家なんて・・・。
大体、実家に行くなんて言わないから、手土産も用意できなかった。
・・・ありえない。
初めてうかがうのに・・・でも、それより、深夜に訪問する方が常識外れだよね。
でも、お姉さんも、ジローの姉弟だけあって、そこら辺は全然気にしていなかったみたいで。
それよりも、親に挨拶とか、ちゃんと言葉でつたえるとか・・・ジローが顔を見せたという事が一番重要と思っているようで。
そこは・・・細かいことを気にしない、というより。
とても、素敵な価値観だと、思った。
そこは・・・ジローと同じだと、そう思った。
いや、価値観の話はいいんだけどっ。
「ジロー、帰ったら籍入れるって、どういうこと・・・。」
聞いてないし!
「あ?そのまんまだよっ。おお、そうだ、お前、早くここにサインしろ。あ、姉ちゃんも保証人欄にサインしろ。」
驚く私に、押し付けるようにして渡してきた紙には・・・。
私の名前を書く欄と、ジローの名前の下の欄の保証人の名前だけが書かれていなくて・・・。
「な、なんでっ!?こんなに書き込んであるの!?」
「あ?書かなきゃだせねぇだろうがっ。」
いや、そうだけども・・・。
と、口を開きかけたが・・・・ジローが籍を入れると決めたんだから、早く手配したのだろうと、納得した。
まあ、プロポーズも返事をしたんだし・・・そう思って、急かされるまま記名した。
「ん、じゃあ、姉ちゃんだ。早くかけよ。」
「ちょっと、ジロー!保証人になっていただくのに、そんな言い方ないよっ。すみません、お願いします・・・。」
お姉さんに頭をさげる私を見ながら、お姉さんはクスクス笑い、ジローにあんたも低姿勢で頼みなさいよっ、と突っ込んでいた。
ジローはそう言われたにもかかわらず、早くかけっ、と聞く耳もたずで、あくまでも態度を変えなかったけれど。
お姉さんを保証人にしたというのは・・・やはり、ジローなりの気持ちがこもっているのだろう。
その後、墓参りをしなければならないので、お姉さんに記名してもらうと、早々に玄関を出た。
「ジロー。まりあちゃん。」
結構ある門までの距離をジローに手を引かれながら歩いていると、後ろから声がかかった。
振り返ると。
お姉さんが、微笑みながら。
「おめでとう。」
そう言ってくれた―――

