やっぱり、無理。





「あ、あのっ・・・すみません、こんな夜遅くに・・・。」


「別にかまやしねぇ。どうせ近々来るつもりだったんだ。それに俺が連れて来たんだぞ、お前が謝る事ねぇだろ。ほら、面倒くせぇ挨拶はもういいから。早く上がれ。」




俺は、申し訳なさそうに頭を下げるまりあにそう言うと、腕を掴んで強引に玄関を上がらせた。




「ちょっと、慈朗!!なに慈朗のくせに偉そうなこと言ってるのっ。それに、女の子にそんな乱暴なことしちゃあだめでしょっ!!」




いい歳になってるっつうのに相変わらずくそ煩くて元気な姉ちゃんにうんざりしながらも、どこかでホッとしていた。




「あ?うるせぇよ、それより、ビール。」




長距離運転で流石につかれて、喉も渇いているしで飲みたいと思ったのだが。



姉ちゃんに頭を叩かれた。




「お母さんたちに挨拶が先でしょっ、この親不孝者!!」




まりあが、その様子を見て、唖然としていた。




まりあを連れて仏間に行き、線香をあげ、一緒に手を合わせた後。


写真のお袋と親父に向かって、一応報告をしておいた。




「こいつ、まりあ。嫁さんにする女だ。」




まあ、俺のことなんかあの世からお見通しだろうが、一応・・・姉ちゃんが、こういうけじめみたいのはうるせぇからな。




「お母さん、良かったわよねぇ。こんな勝手で乱暴でぶっきらぼうな男、お嫁さんになってくれる人なんか絶対にいないって、2人で心配してたけどねぇ・・・奇特な人がいてよかったわー。」





姉ちゃんが、俺を押しのけて、写真のお袋にでけぇ声で言いやがった。


ったく、言ってることは結構ひでぇのに、涙ぐみやがるから言い返せねぇじゃねぇか。


仕方がないので、俺はまりあに、お前も挨拶しとけ、と言ったのだが。





「え・・・あの、ジロー・・・お嫁さんって・・・・え?何?誰が?」




何の事だか、わからないという顔で俺を見やがった。




「あぁっ!?俺の嫁つったら、お前以外誰がなるんだよっ!?惚けたこと言ってねぇで早く挨拶しろっ、俺はビール我慢してんだよっ。」




ビールよりも実は、この状況が耐えられねぇんだけどよ・・・。


俺は、こういう改まった事は苦手だ。




だけど。




「ごめん、いくらジローが不機嫌になっても・・・大切なことだから、誤解がないようにしておきたいの。え・・・と、私たち・・・結婚するの?」


「ああっ!?」




今更なことを、まりあが尋ねてきやがった。