「ああー、やっと北島さん戻られましたねー。遅いですよぉ。あ、写真だけならすぐ撮れますよね?北島さん、さっき研究室の学生さんと山岸先生を撮らせて頂いたんですけどー。肝心の北島さん不在で、男子学生ばっかで、ガックリだったんですよぉ。これで、山岸先生と北島さんのツーショットを入れたら、もう、バッチリなんで・・・ああ、今日のその淡いベージュのスキニーパンツに、白の綿シャツ・・・清楚で、さりげなくて・・・もう最高ですっ。」
こっちの意志も聞かずに塩崎がまりあを見て舞い上がり、ベラベラとカメラで撮影する事を言い出した。
「え・・・あの?・・・ジロー・・・何の事?」
だけど、ベラベラ喋ってたくせに、全然内容は伝わっていない残念さだ。
俺はため息をつくと、まりあの腕をぐいっ、と引っ張り俺の体の後ろへやった。
「あ、あの?・・・山岸先生?」
そんな俺の態度に戸惑う塩崎に俺は答えず。
「理事長命令で、『表現の刻』の取材を受けろってことでな・・・それも、学園の宣伝も兼ねてと言われてな。仕方が無く今日インタビューとゼミのやつらに集まってもらって写真とったんだ。」
そうかいつまんで説明すると、まりあは理解したようで。
途端に、俺の体の後ろから声を出した。
「ごめんなさい、私・・・撮影とか、そういうのは苦手なので・・・。」
まりあは、小さい頃からやはり容姿は際立っていたようで。
スカウトや、読者モデルの誘い、街頭で写真を撮らせてくれ・・・等、かなり言われてきたようだが。
家の事情のため、極端なマスコミに対する拒否感が強い。
俺と一緒の時も、外出先で3、4度そういった声をかけられたこともあったから、まりあの拒否感の強さは、俺はよく理解しているのだが。
「ええっ、ど、どうしてですかっ!?」
塩崎には理解できないらしい。
まあ、まりあの年代の女なら喜んで出たい、というヤツが多いのだろうからな。
「どうしても、こうしても、ねぇよ。まりあが嫌だっつってんだ。取材も終わったし、もういいだろ。」
そう言い返したのだが。
「君。やっぱり、縁があったね?」
それまで黙っていた片岡が、いきなりまりあに話しかけた。

