やっぱり、無理。




何故か、私は昔からよくモテた。


うぬぼれとか、そんなんじゃなくて。




最初に気が付いたのは、幼稚園の時。


誰かと一緒に遊ぶというより、絵をかいたり、本を読んだりするのが好きなタイプで。


とゆうより、人とツルむのが既に、苦手だったのだろう。


教室の隅でいつも1人で何かをしていたはずなのに、いつの間にか気が付くと男の子が周りにいる、という状況になっていることがしばしばで。


中には、意味もなく私のクレヨンを取り上げたり、画用紙を破ったりした子もいたが、面倒なのでそんなのは無視をしたり相手にしなかったし。


他の男の子がそういう子に注意するようになったりで。


そのうち、周りは親切な男の子ばかりになっていた。


そうなると、面倒なのは女の子で。


まあ、東野さんみたいな感じで、身に覚えのない陰口や意地悪を良く言われた。


だけど、基本、私は。


家庭環境のせいか、無理かどうか瞬時に見極める癖がついていて、そういう女の子たちとは仲良くできないと早々に見極めて気にもしなかった。


まあ、それが火に油を注ぎ、今に至るのだろうけれど。




でも、結局。


外の世界なんて、私にとってどうでもよかったのだ。



外の世界で言っている「パパ」は、本当のパパじゃなくて。


外の世界で言っている有名な俳優さんが、本当の「パパ」で。



だから、外の世界から早く内の世界へもどりたくて。


本当の世界には、本物の家族が私を愛してくれているから――



だから、実際・・・外の世界なんてどうでもいいと思っていた。




しょっちゅうされる、告白も。


結局は両親から受け継いだ容姿のよさを見られているだけで内の世界の私なんて誰も知らないし、そんな私を好きだと言われたって。


到底、その気にもなれなかった。




だけど、ある日、ジローに出会ったことで。


その気になれないだとか、外の世界だとか、本当の世界だとか――


そんなことは、ただの理屈だと思い知ったのだった。












「家庭教師を頼まれた、山岸慈朗だ。」





物静かな、柔らかい薫さんの声とは異質の。


やたら大きくてぶっきらぼうな野太い声に、私は心臓がドキリ、とした。



いや、それだけじゃなくて。


170㎝という女子にしては長身の私が見上げるほどの、高いところにあるその顔を見て。


目が合ったという、それもドキリ、の原因だったのだろう。



何とも言えない、目をしていた。


迫力があって、光があって、澄んでいて、ブレない力強さを感じて。


なのに、私を溶かしてしまうような、甘さも秘めているような・・・・。


到底表現できない、見たこともない瞳だった。


多分、一瞬にして、惹かれたんだと思う。



だけど、次の瞬間。


ジローの体から、甘いキツい香りが漂い。





この男は無理だ―――





そう思った。



だから、ジローとは距離をとっていたはずなのに。