君が髪を切った理由



外を走る車の音が人目を気にさせた。

でも、今この部屋には僕と亜紀しかいなかった。



下から僕を見上げる彼女の表情が、心にブレーキをかける。



「やめて、とか言わないの?」


「ハルはそんなことしないし」



秒殺。



「……熱あるんだ。移るぞ」



僕は彼女の上から身を引いた。



「そうなんだ、残念。それじゃあ一人で行くしかないか」



倒された拍子に乱れた髪を指でとかす仕草が、僕の体を揺らした。



「髪、短くしたら?
……似合うと思うんだ」


「だめ。真寿は長いのが好きなの」



知ってる。



今のままでもいい。
友達として近くにいられるなら。


そんなふうに考えてしまう自分を変えたかった。