澄み渡る青い空。一つの雲もない。今は、古典の授業。特に私生活に影響のない言葉が空気を漂う。

お腹、空いたな。

ポケットを探ると、指が拾うは一つのキャンディ。朝、先輩からもらったもの。
それを、包みから出して口の中で転がしていく。甘い味が広がった。甘い、甘い、イチゴ味。とろけるような、そんな味。彼の顔が頭に浮かんだ。
すごく嬉しそうに笑った顔。ちょっと拗ねたようにねだる顔。どれもが私に何かをくれた。
きっとモテるのであろう性格と、顔立ち。爽やかっていう言葉が合う。

ふと、グラウンドを見れば先輩が居た。周りには、体格のいい一人の男の先輩と、数人の女生徒。
にこやかな笑みを浮かべる一条先輩。

(ズキ

突然、痛みのような感覚が胸に響く。何故だか、それ以上、先輩を見てはいけない気がして、教科書に目を向けた。

ああ、なんだろう?

口の中の飴玉が、疑問の代わりにゆっくり溶けた。