あれは…いつだったろう


まだ8歳…位だったか


私は孤児だった


でも、持ち前の明るさと負けん気でそんな事には負けなかった


いや、レンジがいつも側に居てくれたからそう振舞えたのかもしれない




どんな事をされても怒らないレンジ


優しくて女子からも結構人気だった


でも、滅多に怒らないレンジが…


激しく怒った事がある


クラスに1人、ちょっと意地悪な生徒がいた


「親無しはロクな大人にならないって大人が言ってたぞ?」


そんな言葉を私は投げかけられた


「……!!!」


ショックだった


思わず泣きそうになった


なんでそんなの分かるんだ


でも、現実親はいない…


反論出来なかった…


でも


「ふざけんな!!」


隣にいたレンジが怒鳴った


「なんだよ?お前も片親だから…」


ーバキッ!!ー


レンジが…


あのレンジが…


飛びかかって相手を殴ったんだ…


「ふざけんな!なんでお前に分かるんだよ!!」


レンジはおかまいなしに相手を殴る


相手も負けじとレンジを殴る


「ちょっと!やめてよ!レンジィ!!」


結局、相手は走って逃げてしまったけど…




「痛た…!いった…!!」


「ちょっ…なんでアンタが怒んのよ…」



鼻からは鼻血


服は破けてる


レンジはボロボロだった


「だって…許せなかったんだもん」


「いや…なんでよ…?」


「ナナちゃんを…いじめたから…!!だってナナちゃん、優しいじゃんよ!!良い大人になるに決まってるもん!!」


「…レンジ…」


「ナナちゃん…何もおかしい所無いのにあんな事言われるの許せなかった…だから…」


レンジは俯きながら…でも、力強く私に理由を述べた


普段怒らない彼が、私を守る為に怒った事


私の為に戦ってくれた事


私の為にボロボロになった事


それが嬉しかった…


本当に嬉しかった…!


男の子だった


優しい所が取り柄のレンジ


でも、レンジは戦う事も出来る立派な男の子だった


でも、私はポロリポロリと泣き出してしまった


「え…?なんでナナちゃんが泣くの!?」


「グス…だって…!!ふぇぇ…!!」


「ちょっ…泣かないでよ!」


「だっでぇ…!レンジ痛そうなんだもん……!暴力はダメだよう!」


私の為に、痛々しい姿になったレンジを見て耐えられなかった


「大丈夫だって…!ほら…泣かないで?」


ハンカチで私の涙を拭ってくれるレンジ


「……!!」


痛くって、辛いのはレンジのはずなのに…


優しくハンカチで涙を拭ってくれたレンジ


「…どうしたの?顔が…赤いよ?」


「な…なんでも…ない…!」


その時だった


胸が張り裂けそうだった


ううん…


身体全体が破裂しそうだった



私ははっきり自覚した


ああ…


私は


レンジの事が好きなんだって