「まぁ、ヒトミにはおおかた話したけど…きちんと話すわ…」


広い校庭のど真ん中


私達は小さく丸くなってエリさんの話に耳を傾ける


「まず、坂崎レンジ君?」


「は…はい…?」


急に呼ばれたレンジはキョトンとする


「ここにいる女性陣は、普通の人間じゃありません…掻い摘んで言うと死神です」


えーーーー!


そんなすんなり!?


「死神…いや…まぁさっきナナちゃん達の会話でも聞きましたけど…」


「そして、私はあなたを殺す様に、この桜川ナナに命令しました」


「は?」


レンジは素っ頓狂な声を出す


「あ…いや…その…なんで僕は殺されなきゃならないんですか?」


「あなたはこの先、新型インフルエンザにかかります」


「い、インフルエンザってだけで死刑なんですか!?」


エリさんは腕を組み直す


「完全な新型の上にワクチンがないインフルエンザ…あなたがきっかけで地球上で億の人間…最終的には人類の半数が死ぬからね」


「お…億…?」


「そう…私達、死神の組織の1つであるテラーはそれを阻止するために、あなたの元にこの桜川ナナを送り込んだのよ?」


「は…はぁ…僕を殺してそのインフルエンザの脅威を消そうとしたわけですね…」


レンジは少しずつ、飲み込めてきたみたいだ


「で、凶悪なインフルエンザに感染する君を殺す代わりにナナは君と死者の世界で永遠に暮らせる権利をもらうはずだったわけ」


「……」


ポカンとするレンジ


「で、こっちの白いブレザーの2人は私達のその行動を阻止する為に動いていたわけ」


「え?どうしてですか?同じ死神なのに…」


「死神にも色々あんのよ…まぁ死神にも組織が2つあるのよ」


「2つ…分かる様な分かんない様な…対立してたわけですか?」


レンジはなんだか複雑そうだ


「白いブレザーの方は普段は私達みたいな…強制的に命を狩る事は禁じてるんだけどね…だけど今回の…君のケースは違うのよ」


そう、それが疑問だったんだ


そして、エリさんはとんでもない事を言い放つ




「君は…死神の生まれ変わりなのよ」


「は?」


私とレンジでハモってしまう


「闘神、カルマの生まれ変わり…君は自覚ないでしょうけどね」


「か…かるま?な…何それ?私聞いてないよ!!」


「そりゃそうよ…言ってないもん」


言ってないもんって…


「テラーは君の死神としての力を欲していたのよ…君を殺して再びカルマに戻す…そういう魂胆」


「僕が…死神…?」


「良い?ここからが重要よ…?んしょ…」


エリさんは束ねていた髪の毛をほどく


風に吹かれてサラサラとなびく


「坂崎レンジ君…君はインフルエンザに感染するんじゃないのよ?」


「は…?さっきと話が真逆なんですけど?」


「インフルエンザに感染…させられる、のよ…」


「させられる?だ…誰にですか?」


レンジの質問に…エリさんは間を空けて答える


「テラーと委員会、両最高部会よ」


な…なんだって…!


「え…エリさん…それって…何で…?」


「…テラーと委員会は度重なる魂の管理を放棄したいのよ」


「放棄って…私達の仕事じゃないのよ…大体なんでテラーと委員会でやんの?敵対してるのに…」


エリさんは続ける


「敵対と言ってもね、そんなのは表面上よ」


表面上…?


「上層部は結構仲が良いのよ…ね?ヒトミ♪」


「ハハ♪そうだな!」


ヒトミさんはタバコを咥えながら笑う


「まぁ話は変わるけど、私とヒトミはあくまで組織上は敵…」


「じゃあ何で仲が良いのよ?」


「私はテラー、ヒトミは委員会を、お互いに自らの組織を裏で監視…そしてお互いに報告し合ってるのよ」


「は…え?何で?」


自分の組織を監視?


「自分の組織が不正を働いたり、私達に不利益な行動をするのを防ぐためよ」


「…つまり、お姉さん達は労組みたいなものなんですか?」


レンジが口を開く


ろ、ローソン?


「さすが男の子ね♪的確ね…頭の中身はエロい事ばかりじゃないわね!」


「あ…あの…なんでエリさんはローソンで働いてるの?」


「ナナちゃん…ローソンじゃないよ…ろうそ、労働組合だよ」


「あなたの彼女にはもう少し勉強教えてあげなさい」


な…なんか…バカにされてる?


「普段は敵対してるが、お互いの組織の情報の交換や意見の出し合いをしてるのさ…私とエリは」


「だから仲が良いのよ」


「しかしエリ、私に今回の事を何故詳しく教えなかった?そしてこの先どうするつもりだ?」


ヒトミさんの問いにエリさんは更に説明を続ける