私はテクテクと歩く


目指すはレンジ君の家


私の家からは繁華街を通れば近い


「……!」


周りの人達が私を凝視する


そりゃそうだ


真っ白なブレザーに、中国刀を持っている


まぁ、刀は鞘に納めてるけど


はたから見ればコスプレにでも見えるだろう


「ね、ね、それなんの格好なの?」


私の前に数人の男子高校生が立ちはだかる


茶髪にピアス


チャラい格好にチャラい口調


まあいわゆるヤンキーってのかな


しかしチャラいわね…


不良ってのはこう、いかつくて硬派なイメージだけど…


「ね、ね、それ格好いーじゃ〜ん!見せてよ?」


私の刀を指差す


「お断りします…用事あるんで」


「少しくらいいーじゃんよ?ね?」


よっぽど暇なのね…しかしすこぶるめんどくさいわ…


男は私の刀に手を伸ばす


「触んないで」


「いーじゃんよ?」


「触るなサル」


その言葉がよほど頭に来たのか男達は私の肩を掴み凄んでくる


「サルとか言ってんじゃねぇよ…!少しくらい触らせろって言ってんだよ!」


「イヤ、どけこの動物」


「オイ!このクソガキ!!」


さらに私の腕を掴もうとする男


ーベキィ!!ー


その腕を刀の柄で肘を強打する


ちょうど肘を下から柄で打ち上げる形だ



肘が反対に曲がる


「あ…?」


男は一瞬、何が起きたか分からない様子


「いってぇぇぇ!!うわぁぁ!!腕が!!腕がぁぁ!!ああぁ!!!」


「男のクセに情けないわね…黙りなさいよ?」


私は彼らには見えないスピードで鞘のまま、アバラに強打を打ち込む


「ギャン!!」


吹き飛ぶ男


ちょうどあったお店の壁に激突する


唖然とする他の男達


友達がやられてるってのに、情けないヤツらね


「どいて…このグズ」


私はその場所を後にする


私には大切な用事があるんだ…


お前らみたいな低脳なグズに付き合ってる暇は無い


「〜♪〜♪」


私は鼻歌を奏でながら、夜の街を歩く


さて、どうやってナナちゃんを殺してやろうかしら?


いきなり魂を破壊するのはつまらない


まずは手足を切断してやろう


そして、動けなくなった所で目の前でレンジ君を…


殺害する


「クフ…クッフッフ♪」


笑いが出てしまう


辺りは繁華街から離れ、人目はつかない


ならば、笑ってしまえば良い


「クフ…ハハ…アッハッハ!クックックッ♪アーハッハッハッハッハッ!ケッケッケッケッケッケッケッケッケッ!!アッハ…ゲホォ!ゲホゲホゲホ!!…ジュルル…」


笑い過ぎて、咳き込んでおまけにヨダレが出てしまった


でも、こんなに愉快な気持ちは初めてだ


不思議だ…


好きな男の子にバッサリ振られたのに…


しかも、ライバルの女の子が好きと宣言された


でも…


そのライバルの女の子を殺すんだ…


楽しみ以外の何物もない





私にはもう、何も残ってない


レンジ君が好きになってからはそれだけを生き甲斐に生きてきた


だけど、もうそれは無い


………



私には…もう何も残ってないんだ!!