シャワーから上がるとナナちゃんはリビングのソファでくつろいでいた


テレビを見て、ケラケラと笑ってる


…馴染みすぎだろう…


「あ、お風呂から出たの?」


「うん…」


そういえばお昼食べてないからお腹空いたな…


「ナナちゃん、何か食べる?」


「え?うん!食べる食べる!」


カレーが残ってるけど…そういえばマコ姉ぇにご飯結構食べられちゃって2人分は無いんだよな…


「やきそばで良いかな?」


「やきそば?食べる食べる!私やきそば好きなんだよねぇ!」


それは良かった…


早速、支度に取り掛かる


「…ペヤングじゃないの?」


「いや…ちゃんと作るんだよ♪」


僕はモヤシとか野菜…イカのリングを入れて料理する


「アンタ…凄いね…」


料理をする僕を見ながらナナちゃんは感心する


「そう?焼いてるだけだよ?」


「まぁ…アンタ家のお手伝い良くやってたしね…」


そして、やきそばが完成する


「いっただきまーす!」


ナナちゃんはやきそばを頬張る


「あむあむ…美味しーわ♪」


そりゃ良かった…♪


「けどさ、アンタ何で昼間家に居なかったの?」


「ん?部活行ってたんだ…それと買い物…ていうか…昼間来てたの?」


「うん…朝に正式にこっちの世界に生き返ったから真っ先に来たのにいないんだもん」


少し膨れるナナちゃん


「なんかごめん…じゃあ昼間どうしてたの?」.


「アンタを探し回ってたわ…でも、暑いからコンビニとか、図書館に避難してたけど」


かわいそうな事したな…


「おいひー♪」


続けてやきそばにパクつくナナちゃん


するとある事に気が付く


左手でお箸を持ってる…


そう…ナナちゃんはご飯は左利きだったんだ


「やっぱり…ナナちゃん…だ…」


「んあ!?あんひゃはひひっへんにょ?」


「ちゃんと飲み込んでから喋りなよ…」


「ゴク…アンタ何言ってんの?」


「いや…ナナちゃん左利きだったし…」


「まぁだ信じてなかったわけ?…おりゃ!」


.ナナちゃんが僕のほっぺを抓る


「いひゃいいひゃい!本気でやらないで〜!」


「ンフフ〜♪夢じゃないでしょ?」


「うん…痛かった…」


ナナちゃんは満足そうだ


「でもナナちゃんさ、どうやって生き返ったの?」


「ん?まぁ…確かにアンタは疑問よねぇ」


「うん…ドラクエみたいな話だし」


ナナちゃんが詳しく説明を始める


「私さ、死んだ後…死者の世界にいたの…」


死者?


「うん…まぁなんつーか…こっちの世界とはあんまり変わんないんだけどさ…気がついたらいたの」


ナナちゃんは麦茶をコップに注ぐ


「でも、誰もいないし、どこに行けば良いかもわかんなくってさ…泣いちゃったのよね…」


まぁ確かに…泣くよな普通…


「さっき、こっちの世界とあまり変わらないって言ったけど、決定的な違いがあるの」


「違い?」


「うん…時間の概念が無いのよ」


時間…でも想像がつかない…


「だから、どんだけ泣いたかも分かんなくてさ…でも、しばらく経ってからある人が来たの」


人?幽霊じゃなくて?


「うん…まぁその人にお世話になるんだけどね…エリさんっていうお姉さんだったわ」


「へぇ…」


「エリさんは私に言ったの…あなたの願い、叶えてあげるって」


「願い?」


ナナちゃんの願い…一体何なんだろう…


「私の願いはただ一つ…生き返る事だったわ」


だから…生き返ったのか…


「でもね、簡単に生き返るなんておいしー話無いわけでさ、修行したのよね」


「修行?」


「そ!生き返る為には厳しい修行が必要なの…その修行をエリさんに受けて…んで、修行が終わってこっちに戻ってきたってわけよ!」


そうか…大体は分かった…でも、1つ疑問がある


「住民票とかどうするの?」


「じゅ?住民票…?アンタまたいきなり現実的な…でも大丈夫よ!その辺りは手はずは済んでるから」


「手はず?」


「そ!私が生き返っても問題無い様に用意はしてあんのよ」


「へぇ…じゃあウチに住むのも?」


「もち!」


…便利なんだな…


「アンタのお父さんも、桜川ナナって言う私にそっくり、同性同名の女の子を引き取るようになってるのよ」


「そうだったんだ…」


「ごちそー様ぁ!あーお腹いっぱいだわ!」


ナナちゃんはお腹をさする


「そういえば…部屋はどうしよう…一応僕の隣の部屋が空いてるけど」


「うん…それで構わないわ…まぁ私はアンタと一緒でも良いけど」


いや…それはダメだろう…


僕はナナちゃんの部屋となる場所に案内する


ちょうど都合良く、パイプベッドが1つ余っていたのでそれに布団を敷く


「ここがこれから私の寝床になるのねぇ♪」


「うん…せまいけど我慢してね…」


「ありがと!」


ナナちゃんはニッコリ笑って僕にお礼をする


…可愛い…!


やっぱり…ナナちゃん…可愛いな…


ドキドキしてしまう…


そして、僕らはすぐに寝ないでまたリビングに戻る


だって…また再会出来たんだ…


話す事は山の様にある


昔の思い出話とかたくさん…


「アンタそういえばおでこにキズあるわよね?もうほとんど消えてるけど」


「ん?あぁ…そういえばそうだね…でも良く覚えてるね?」


「まぁね!確かブランコから落ちたのよね?」


「あー…そういえばそうだ…」


確かに小学校1年の頃ブランコから落ちたな…


いや、待てよ?


「それってナナちゃんが後ろからドロップキックしたからだよね?」


「…そうだったっけ?」


…重要な事覚えてないな…


しばらくすると、ナナちゃんは写真立てに気が付く


戸棚の上に飾ってたやつだ


マジマジと写真を見る


「あ…それ部活のコンクールの時の写真なんだ…受賞した記念にみんなで撮ったんだ」


しかし、ナナちゃんは低い声で僕に語りかけてくる


「…アンタ…まさか彼女とかいない…わよね?」


「へ?」


「だって…女の子ばっかりじゃん…」


明らかに顔が不満気になるナナちゃん


「い…いや!いないよ!みんなクラスメイトとか先輩だよ!」


「…いないなら良いけど…つーか女の子みんな可愛いわね…」


「ん?あぁ確かにみんな評判良いけど…」


——ドン!


ナナちゃんが写真立てを強めに置く


「だからこの部活に入ったってわけ?」


「へ?いや…そんなわけないじゃんよ!」


「どーだか!このエロレンジ!」


な…なんでエロ呼ばわりされなきゃならないんだ…


「それに、僕が彼女いる様に見える?」


「…まぁ…そうよね…」


…そこはアッサリ納得しないでほしいんだけど…


「ま!良いわ!明日さ、色々服とか買いたいし、買い物行こうよ!一緒に!」.


「別に構わないけど…あっ!ちょっと待って…僕は冷蔵庫にある予定表を見に行く


明日の午前中はノブと図書館に行く約束してたんだ…部活の資料集めで


「明日さ、午後からで良い?部活の友達と約束があってさ…」


するとまたナナちゃんは不機嫌になる


「…誰よ?どの女の子よ?」


写真を見ながら僕に質問する


「へ?あ…いや!コイツだよ!」


僕は左端に写ってるノブを指差す


「男の子か…」


「うん!コイツとは仲良くってさ…コイツと資料集めしなきゃダメなんだ!」


「ふーん…なんかコイツキモいわね…」


写真だけでキモいと判断されるノブ


かわいそうに…


「コイツに任せちゃダメなの?」


更に酷い扱いを受けるノブ


「いや…コイツ…ノブは結構良い加減なヤツだから…きちんとした資料集めないと部長に怒られるんだ…」


アイツなら怒られるのが目的で本当にエロ本を持って行きかねない


「そうか…怒られちゃうのか…じゃあ仕方無いわね…」


何とか納得してくれたナナちゃん


「さて…もう時間も時間だし、寝る?」


時刻は既に夜の11時…


「そうね…ふぁ…!私も歩き回って疲れたし…


そして…僕達はお互いの部屋で床につく…


あり得ない事が現実に起きた…


ナナちゃんが生き返った


初恋の人だった、ナナちゃん



僕は願う…


この事実が…夢でないようにと…


僕はそう願いながら眠りに落ちていった…