今、ヒトミさんがナナちゃんを足止めしてる



その隙に私がレンジ君に想いを伝えて…


あわよくば執行する…!


レンジ君とナナちゃんはいつも一緒だからね…


こーでもしないとレンジ君単独の時間が無い


ヒトミさんは性格は豪快だけど、こういう所は頭が切れる


助かるわ…


私はレンジ君の自宅の前にいる


私は深呼吸をする


「……!よし!…やるぞ!」


私は意を決してインターホンを押そうとする






「何をやるつもりかしら?お嬢ちゃん」


!!!


真後ろからいきなり声が…!


そして、襟首を掴まれ、凄い勢いで後ろに投げ飛ばされる


「キャア!」


—ドガッ!!—


塀に勢い良く激突する


「うぐ…!」


だ…誰なんだ!?


「泥棒猫も大概にしなさい…委員会のお子ちゃま」


「だ…誰なの!!?」


「テラーよ」


!!!


倒れながらその人物を見る


髪の毛は後ろで束ねてあって、目は切れ長


そして、テラー特有の薄紫色のブレザーを身にまとっている


「テラー…!!」


「フン…驚いてるみたいね」


女性は私を冷たい視線で見下ろす


「く…!!不意打ちなんて…卑怯な…!」


「上司にナナを足止めさせておいて…お互い様でしょ?」


!!!


「な…!!」


私達の動きが…


何故わかるの!?


「まぁ…こうも私の思惑通りに動いてくれるなんて、あなた達ある意味素敵ね」


冷たい視線のままでクスリと笑う女性


「思惑通り…!?」


「坂崎レンジを先に奪いに来たんでしょ?」


「…!!」


「泳がされてるとも知らないで…ご苦労様」


「ま…まさか!あの情報は囮?」


「そうよ」


く…くそ!!


じゃあ…インフルエンザも…


レンジ君がカルマってのも…


「まぁでも、情報自体は本物よ」


…?


「坂崎レンジはこの先、インフルエンザに感染、そして、闘神の生まれ変わりでもあるわ」


!?


「…い…一体どういう事なの…」


「フン……というか、いつまで寝っ転がってるつもりかしら?」


確かに…


私は立ち上がる


「ご丁寧に立ち上がらせるなんて…随分と余裕ね…このまま仕掛ける事だって出来るのよ?」


「別に…あなたが寝てようが立とうが、問題無いわ」


…何を…!


「不満そうね…やってみる?」


「…そりゃ…私だって委員会のガーディアンだしね…」



私は女性と戦う為に構える


「へぇ…その構え…あなた武術を仕込まれてるわね?」


「ふん!!」


私は手刀の突きを繰り出す


「おっと…」


女性は紙一重で避ける


「手刀の突き…あなた…相当に武術の訓練をしてきたわね」


「黙れ!!」


私は突きや蹴りで連続で女性を攻撃をする


しかし、女性には全て避けられてしまう


「く…くそ!!」


「武術は相当に仕込まれてるからスピード、力に関しても問題無いわ…ナナと良い勝負だわ」


「うるさい!!」


私は渾身の突きを繰り出す


しかし


またもや避けられ、目の前には女性の…


デコピン?


—バチン!!—


「うがっ!!」


私はデコピンを喰らい、後ろに吹き飛ぶ


「痛…!!っつぅ…!!」


「どう?」


…この女性…かなり強い!!


ヒトミさんから訓練を受けた私の攻撃を全部避けて…


なおかつ、デコピンでこんな威力なんて…


つーか…なんてデコピンなの…!


マジで痛いわ!


しかし…武器を使わないと…まともにやり合えない


私は武器を出現させる


「へぇ…中国刀…双刀術ね?」


「避けきれるかしら?…いくわよ!」


私はヒトミさんから仕込まれた双刀術で女性を攻撃する


このまま魂を切り刻んでやるわ!!


双刀術は日本の二刀流とは似て非なる


日本の二刀流は小太刀や脇差で相手の攻撃を防御や受け流しを行って太刀で切る


双刀術は二刀で防御、攻撃を展開する


どちらの刀も区別は無い


一撃必殺の日本刀とは違い、手数が物を言う


私のお気に入りの武器だ


私は女性に再び攻撃する


だけど…


やっぱり当たらない…!


「フン…さっきより速いわね…回転の動作が多い分、刀の威力、速さも申し分無いわ」


くそ…!


いちいち解説なんかして…!


ムカつくわ!


「でも、まだまだ修業が必要みたいね?」


—ガシッ—


女性は刀を…


素手で受け止めた!?


しかも、片手でそれぞれの刀を…!


「刀ってのは当たらなきゃ意味ないし、スライドさせなければ切れないわ…斬撃のシステムを理解してれば白刃止めなんて簡単よ?」


く…くそ!!


か…刀がピクリとも動かない!!


「こんな危ない物は没収ね」


いとも簡単に、中国刀を奪われる


「く…くそ!!返せ!!」


「返せって…あなたバカなの?私は敵なのよ?」


ぐ…


確かにそうだ…


「ま、良いわ…返してあげるわ」


—カラン—


女性が私の中国刀を私に向かって投げ捨てる


く…くそ!


敵からこんな舐めた真似されたのは初めてだわ!


私は中国刀を手に取る


しかし…確かにこの女性…他のテラーのハンターとは全く違う…


私のスピードで全く捉えられなかった…


「私を倒したければ、そのハエの止まりそうな動きをなんとかする事ね」


「は…ハエですって!?」


「確かにあなたは速いけど、私にとっちゃその程度って事よ」


く…


でも…確かにこの女性の実力は桁違いだわ


悔しいけど認めざるを得ない


「あ…あなた達テラーの狙いは何なの?」


すると女性は腕を組む


「坂崎レンジの殺害における世界の救済よ」



…ウソだ…


絶対に裏があるはずだわ


「テラーはレンジ君の魂をカルマに戻して、死者の世界を牛耳るつもりでしょ?」


「ふむ…」


女性は顎を撫でる


「フフフ…誰もが考えるストーリーねぇ」


…違うのか?


「あなたは裏があると思ってるんでしょ?」


「…そうよ!!」


「そう思いたきゃ思いなさい?」


くそ…やっぱり敵には教えないか


「ホントは私が出る幕は無いと思ったけど…泥棒みたいなガキンチョがいるから仕方なしに来たのよ…」


「…そんなにレンジ君が欲しいってわけ?」


すると女性はクスリと笑う


「違うわ」


…?


なんだ…?この女性の意図が読めない


「ま、可愛い愛弟子のナナの初恋ですもの…叶えてあげたいしね」


「ナナちゃんが弟子?」


この女性がナナちゃんを訓練したというの?


なら…ナナちゃんも相当にやるはずだわ


女性は後ろを向く


「でも、私もそんなに甘くは無いわ?坂崎レンジがあなたを選ぶならそれはそれ…仕方の無い事よ」


「なら…なんで邪魔を…」


「正々堂々とやりなさい…その結果、坂崎レンジがあなたを選ぶなら私は何も言わないわ」


正々堂々…





そして、女性は軽く振り向く



「次、姑息な真似をしたらひねり殺すわ?」




「……!!」


その時に一瞬だけ感じた




もの凄い殺気と死神のオーラ…


ほんのコンマ数秒だった


今まで感じた事の無いオーラと殺気…


わ…私が叶うはず無いわ…!


実力の差がありすぎる…!


「さ、今日の所は帰りなさい…」


私は微動だに出来ない位に女性に怯えていた


「……10数えるからそれまでに失せなきゃ殺すわよ?」


!!?


「く…!」


私は女性の言葉に有無を言わずに走り去る


悔しいけど…


今は逃げるしかなかった…