「はい…飲みなさい?」


「あ…頂きます…」



私は今、公園にいる


喜多見先輩に呼び出され、学校近くの公園のベンチに座っている


喜多見先輩が缶ジュースを買ってくれた


「マイコとこう、個人的にお話するのは初めてよね?どう?文化祭の方は…」


「あ…はい!主人公だし…悔いの無い様にやりたいです!」


「ふむ…やる気はバッチリって感じね」


喜多見先輩は缶ジュースを開ける


「まぁ、私やマナミから見てもマイコにレンジ君、2人共に実力は充分…このままいけば成功するでしょ」


「あ…ありがとうございます!」


何だ…急に呼び出されたからドキドキしたけど…


文化祭に向けての意思調査みたいなもんか


しかし


「実力は充分…だからやめてくれない?」


「は?」


喜多見先輩は一呼吸置く


そして





「レンジ君との個人的なレッスン」


!!!


「え…な、なんでですか!!」


私は驚きを隠せない


「実力は充分…だからよ?」


「いや…でも…練習はいくらでもやって良いって先輩達が…」


「そうね…だけど、チームワークを無視した行為は別だわ」


チームワーク…


「まず1つ、あなたは部長たるマナミに相談無しでレンジ君との個人的なレッスンを開始したわね?」


「…はい…」


確かに部長には相談しないでレッスンを開始した…


反論出来ない…


「部長だからって威張る気はマナミはさらさら無いけど、黙って行動するあなたは見過ごせないわ」


「す…すみません…」


「それとね」


喜多見先輩は立ち上がる


秋の冷たい風で喜多見先輩のロングの髪の毛がなびく


「チームワーク…あなたはそれを乱してるわ」


私を見据える喜多見先輩


「わ…私が…」


「あの子を孤独にさせようとしてるのは分かってるわ」


「え…?」


な…マズイ…


私の魂胆を…


見抜いてる!


な…何とか切り抜けないと…!


「あ…いや…ナナちゃんをそんな…孤独にさせようなんて…私は…」


私は弁解するが


「…私はナナなんて一言も言ってないわよ?」


!!


しまった…!


「フン…甘いわね」


「そ…う…あ…」


私は耐え切れず、喜多見先輩から目線を逸らす


その時





「……目を逸らすんじゃないわよ!!!クソガキ!!」


「……!!」


喜多見先輩が…あり得ない程の大声で
叫ぶ


そして今度は反対に穏やかな口調で


「…私もマナミも、余計な事は口に出さないし手も出さないけど…それは部活の内容やメンバーにとってプラスになる事だけよ?」


私はさっきの大声で身体が固まってしまっていた


「あなたは腹に何かを抱え込むクセがあるわ…それは部活にマイナスになる要素よ」


「……す…すみません…」


「もちろん、マイコ…あなたの努力する姿は好きだし、女性らしい気配りも出来る…それも含めてあなたは大好きよ」


喜多見先輩は私の肩を優しく掴む


しかし…


徐々に掴んだ手に力が入ってくる


…痛い…!!


もの凄い力で握ってくる!!


そして、私の顔の間近で低い声で囁く


「…でも、あなたの腹に抱え込む所は嫌い……大嫌いなのよ…?マナミが大事に作り上げてきたこの部活を破壊する人間も嫌い…分かるわよね?」


「わ…分かり…ました…すみません!」


私は謝る…


すると喜多見先輩は肩から手を離しニッと笑う


「…なら良かったわ♪…そうだ!たい焼き食べる?」


急にいつもの様子に戻る喜多見先輩


そして喜多見先輩は公園の中で出店を構えてるおじさんに声を掛ける


「おじさん!たい焼き2つちょーだい!」


な…何なんだろう…


すごく怖かった…


あんなに声を張り上げる喜多見先輩は初めてだった…


部長に喜多見先輩…


侮れない…


それに、これ以上仲を…いや、評価を悪くするわけにはいかない…


「はい!これ、アンコがギッシリで美味しいわよ!」


「あ…ありがとうございます…」


そして…喜多見先輩は私の隣に座る


「まぁ…少し手荒な真似をしてごめんなさいね…?でも、それだけ私もマナミも真剣って事なのよ?」


「わかりました…すみませんでした…」


私は潔く、一旦引く事を選ぶ


…別の方法を考えなくちゃ…!