夏休みも終盤を迎えた頃


部活では大きなイベントが行われる


文化祭での配役の決定だ


既にストーリーは出来上がり、後は配役だけだった


基本的には


主人公の男、女


女のライバル


後はその他人間やナレーション


その主人公とライバルを主に決める日だった


「さて…皆分かってるわね?」


部長が皆を見る


「まずは主人公の男の子…これをやりたいって人を決めなきゃね」


男の子…


必然的に僕かノブになるのは周知の事実


しかし、部長が切り出す


「レンジ君、あなたがやりなさい」


「え…?いやだって…ノブもいるし…」


「どう?ノブアキ君…君はやりたい?」


「いえ、俺はどっちかつーと脇役やりたいし」


アッサリと僕に譲る気満々のノブ


「レンジ君は主人公、やった事が無いでしょ?」


「はぁ…まぁ…」


「どのみち、君には1度大舞台で1番注目を浴びる必要があるのよ…」


部長がペンをクルクル回す


「分かりました…やらせてもらえるなら…!」


「良し!意外とすんなりと決まったわね♪」


部長が満足そうに腕を組む


「で、問題なのは主人公の男の子とハッピーエンドで結ばれる女の子ね」


ピクリと動くマイコちゃんにナナちゃん


「フフン…どうやらすんなりは決まりそう無いわね…ね?ラン」


「そうね…で、主人公の女の子やりたいのは?手を挙げて」


すると、マイコちゃんとナナちゃんが挙手をする


「まぁ当然よね…んじゃ…お互いにプレゼンしてもらおうかしら?」


いきなり、2人にPRをしろと迫る部長


まずはマイコちゃんから


「私は…やっぱり自分達で作ったこのストーリーで重要な役をやりたいです…こういったチャンスって中々無いし…」


そして、ナナちゃん


「私、初めてだし演技も皆より全然ヘタクソだけど…やるなら最初からとことんやってみたいし…」


2人とも、恐縮しながらも自分がやりたいとアピールをする


「ふむ…どう?ラン」


「そうね…マイコの実力は中々のもんだと私は認識してるわ…経験も豊富だしね…人の見てない所で努力もしてるわ」


喜多見先輩はマイコちゃんの評価をする


対する部長は


「確かに…でもナナも経験は無いけど中々の実力よ?私、個人的にナナの演技力を試験的に披露してもらったんだけどね」


そんな事してたんだな…


「実力は充分…経験さえ積めばマイコやレンジ君達にすぐに追いつくわ」


部長はイスに座り直す


「それに、度胸なら他のメンバーよりはるかに優れてるわ」


度胸…確かにそうだな…


ナナちゃんは目立ちたがり屋ってだけじゃない


それに見合った物を持ってるんだ


しばらく、議論が続く


「んー…私としてはマイコにナナ、どちらも甲乙付け難いのよね」


部長は頭をペンでポリポリと掻く


「…多数決、といきたいとこだけど、多数決ってのはある意味で選挙じゃない?」


「ふむ、確かにそうね…この場での挙手方式だと支援してくれた人、してくれなかった人が分かってしまうわ」


喜多見先輩は腕を組みながら皆を見る


「そうね…それじゃ遺恨が残るからね…個人的にはイヤなのよね」


部長がイスから立ち上がる


「ま、ここはジャンケンね…マイコとナナの」


ジャンケン…確かにそれなら両者の運次第だ


「良いかしら?2人とも」


ナナちゃんにマイコちゃん…2人とも頷く


「よし…2人とも腹は決まってるわね…立ち上がりなさい」


2人とも立ち上がり、対峙をする


その間を割る様に部長が立つ


「勝っても負けても遺恨無し…良いわね?」


そして


「最初はグー!」


部長が声を張り上げる


「ジャンケンポン!!!」