「…何?」


僕はナナちゃんを見下ろす


結構な至近距離でお互い向き合う


でも、ナナちゃんは下を向いて僕を見てくれない


「…?どうしたの?」


緩やかな風が吹く


サラサラと稲穂が合唱を繰り返す


そして、虫の音や蛙が辺りで自慢の鳴き声を披露している


それ以外は静寂


「…私ね…私ね…!」


ナナちゃんが何故か俯きながら小さく震えている


「…うん…ど…どうしたの?」


「あの…私…私…私はね!」


ナナちゃんがいきなり上を向く





「ニャーーーー!!!」


「うわあああ!!」


「キャああああ!」


いきなり誰かが農作業小屋の裏から飛び出してきた!!


「アンタら…こんな時間にこんな場所で何やってんの?」


腰に手を当てて話し掛けてきたのは…


マコ姉ぇだった


「な…ま…マコ姉ぇこそ何やってんのさ…」


「ん?だってここ、ウチの農作業の小屋だもん」


マコ姉ぇは後ろの農作業小屋を見ながら言う


「ウチ、兼業農家だからね…とーちゃん戸締りし忘れたから見に来たのよ…」


「そ…そうなんだ」


「つーかさ、この時間に中学生が歩き回ってたらお巡りに補導されるわよ?」


マコ姉ぇは腕時計を見せてくれる


既に夜の11時を回っていた


「それはマコ姉ぇも一緒じゃないか…」


「まぁね!つーかさ、酷くない?」


「え?何が?」


「マナミ達とお祭り行って花火やったそうじゃない?お姉ちゃんも行きたかったな!プンプン!」


「あ…ゴメン…」


「一応、OBなんだからね!」


「ごめんて…」


マコ姉ぇは腕を組みプリプリと怒った素振りを見せる


「まぁ私は高校のクラスメイトと行ったけどね」


なんだ…それなら良いじゃないか…


「つーかさ、アンタらいつまで抱き合ってんの?」


「あ」


マコ姉ぇが飛び出してきた瞬間、僕とナナちゃんは思わず抱き合ってしまったんだ


「ご…ゴメンナナちゃん!」


「あ…いや…」


ナナちゃんはおずおずと僕から離れる


「何?もしかして良いとこだったとか?」


「いや…違うよ…」


「ウチの農作業小屋でセックスとかやめてくんない?」


「だからしないって!」


「したいって?」


「マコ姉ぇ!」


「うひゃー☆」


結局、その後マコ姉とは別れ、真っ直ぐ帰宅する事に


「で…さっきはなんだったの?」


改めて僕はナナちゃんに尋ねる


「ん…えーと…な、何言うか忘れちった!」


なんだそれ…


ナナちゃんはお祭りで買った水ヨーヨーをバインバインさせながら僕の前を足早に歩く


「ちょ…ナナちゃん!待ってよ!」


「アンタがノロノロしてるからよ!」