虫の音が聞こえる


レンジと私は2人で家に向かって歩く


近道という事で農道のあぜ道を2人でゆっくり歩く


辺りには何も無い


たまに農作業小屋がいくつかあるだけだ


「はぁ…楽しかったね♪」


「うん…最初はアンタと2人だと思ったけどやっぱり大勢の方が楽しかったわ」


…まぁ…実の所は2人きりの方が良かったけど


「そーいやさ、アンタ何で線香花火好きなの?」


「ん…?」


レンジが空を見上げる


空には夏の星がたくさん煌めいて私達を照らしていた


「……実はさ…僕、母さん死んじゃったじゃん?」


「…あぁ…そうね…」


「でも、不思議と記憶があるんだ」


記憶…?


「多分母さんが元気だった頃…母さんと父さんと僕で花火やった記憶」


…レンジのお母さんはレンジが小さい時に亡くなった


だから相当幼い時の記憶だろうな


「僕はまだ小さいから派手な花火は危ないって…でも母さん、線香花火を持たせてくれたんだ」


「…へぇ…」


「あの…小さくても一生懸命光るのが何か好きでさ…なんか、小さな力でも綺麗な光を放つ事は出来るって言うのかな?」


「…アンタ詩人ね…」


レンジってたまにこういう事を口に出すんだよな


…まぁ…私はそういうレンジが好きだけど


「あはは……なんかごめんね…ナナちゃん…両親いないのに」


「ん?あぁ…ま、私は最初からいないみたいなもんだから…別に辛くないわ」


少し、風がすり抜ける


サラサラと田んぼの稲が歌を歌う様に揺れる


「なんつーか…私は…別に寂しくはなかったし」


「なんで?」


レンジが私を覗き込む


「そ…そりゃ…施設の友達もいたし…あ…アンタが…レンジがいてくれたし…」


「そっか…僕もそうだな…ナナちゃんがいてくれたから…寂しくなかったよ」


レンジが優しい眼差しを私に向ける


「まぁ…ナナちゃんが死んじゃった後は寂しかったけど…」


「…寂しかった…どのくらい?」


「…ん〜…あの時は世界が終わるみたいな感じだったな…」


私が死んだ後のレンジの様子はマコちゃんから聞いたけど…


「でも、私はこうやって生き返ったじゃん?」


レンジはまた空を見上げる


「うん…凄く嬉しかった…!また、世界が動き出したって感じがしてさ…」


ドキリと私の胸が高まる


なんか……


良い雰囲気になってきた…


……こ…告白…しちゃおうかな…!


いや……するべきだ!



「……レンジ……!」


私が立ち止まると、レンジも立ち止まる



そして、私とレンジは対面する…