「えっと…新規の情報はと…」


私は死者の世界の委員会の本部に来ている


本部の資料室でテラーの情報を見ている


「あったわ…!」


ナナちゃんの情報…


資料は最新版の部類だ


どれどれ…


桜川ナナ…享年10歳


死因は…小児がんか…


しかも孤児…まぁその辺りはレンジ君や本人からも聞いてる


…苦労はしてるのね


死神になった経緯は…不明か


何らかの取引が生じたと憶測、と書かれているだけね


そう…なぜ彼女が死神になったのかが知りたいわ…


よっぽどの理由が無ければ死神なんて選ばないはず


それに、何故レンジ君の家に居候なんて形をとったのかしら?


それに、レンジ君は彼女が生き返った事に対して不思議に思わなかったのか?


……まさか…


ナナちゃんも…レンジ君が…?


「おい、マイコ…何をやってんだい?」


私の後ろから、肩越しに資料を覗く人


私の上司、ヒトミさんだ


「ヒトミさん!タバコ咥えたまま顔を近づけないでよ!火傷しちゃうでしょ?」


「はいはい…」


「大体ね、私は学校でタバコ臭いって良く言われちゃうのよ?女性なんだから…」


「やれやれ…どっちが上司だかわかんないね…」


頭をポリポリと掻き毟るヒトミさん


性格は一言で言えば…豪快に尽きる


スパゲティなんか、ミートソースとかを切らしてると塩とか醤油をかけてモリモリ食べる


そして、ズボラだ…


一緒に住んでるけど、パンツ1枚で過ごすのはやめて欲しいわ…


そして超が付く程の愛煙家であり、酒豪…


女性である事が疑わしい時が多々ある


見た目は結構綺麗なんだけどなぁ…


髪の毛も伸ばしっぱなしだし…


もったいないわ…


「何見てんだい?」


「あ…これは…」


私は、一連の事をヒトミさんに説明する


「ふむ…桜川ナナ…ねぇ…確かにその女はテラー側の死神だ…諜報部からも報告を受けてる」


そうか…やはり…


「しかし、アンタと同じ学校とはね…フン…面白いじゃないか?」


「うん…でも、彼女が何故生き返ったのかが分かんなくて…」


私はレンジ君の事を話す


「ふむ…幼馴染の男の家に…か」


「うん…」


「しかも、アンタが好意を寄せてる男…」


ヒトミさんはタバコに火をつける


「アンタ…バカだねぇ」


…!?


「好きでもない男と一緒に住むか?一緒に住むって事は同じ湯船に浸かるんだぞ?トイレだって同じだ」



…確かにそうだよな…


「恐らく、テラーと何らかの取引を交わして桜川ナナはその男に再び会う為に蘇ったに違いない」


「うん…そうだよね…」


「でだ!」


ヒトミさんは携帯の灰皿でタバコを揉み消す


「お前に任務を与える…」


「え?任務?」


「桜川ナナの監視をしろ…監視した情報を逐一私に報告するんだ」


「監視…」


監視なんて初めてだわ…


「倒さなくて良いの?」


「うむ…しばらくは泳がせる…テラーの思惑なんかを探る為にね」


泳がせるか…


「分かりました…正式な任務ですよね?」


「もちろんだ…!」


私の目を見つめるヒトミさん


「質問は?」


「監視と言っても…万が一戦闘に発展した場合は?」


少し考えるヒトミさん


「戦闘は極力避けろ…ただ…ま、戦闘になったら…ふむ」


頭をポリポリ掻くヒトミさん


「殺せ」


…やっぱり…


「まぁ私もまどろっこしいのは嫌いなんだ…本当はサッサと殺しちまった方が早いんだけどな…上からの命令でな」


そして、ヒトミさんはそばにあるイスに座る


「それに、アンタの恋のライバルなんだろ?実際は…アンタも…やっちまいたいだろ?」


「…………うん」


「ははっ♪ま、私が訓練しただけはあるね…ま、正式な任務だ…がんばってくれ」


「はい!」


私は軽く敬礼をして返事をする


「しかし…アンタさ、サッサと告白しちまえば良いだろ?」


ヒトミさんは呆れた様子だ


「あ…うん…でも、中々勇気出なくて…」


「ま、良いけどさ…部屋に相手の男の写真飾ってるけど…あんなの好きなのか?」


「あんなのって…レンジ君はすっごい優しくて素敵なんだよ…!」


「レンジ…!?」


ヒトミさんの顔色が急激に変わる


「おい…まさか、坂崎レンジか!?」


「…?なんで知ってるの?」


ヒトミさんにはレンジ君の事を詳しくは話してない


名前を言ったのも初めてかな?


「アンタが好きな男…坂崎レンジか?」


「うん…そうだけど…」


また、ヒトミさんは頭をポリポリと掻く


「やれやれ…何の偶然なんだろうねぇ…」


「どうしたの?」


「…命令を1つ加える」


「え?…あ…はい」




「坂崎レンジを………殺せ」