私は学校の廊下の片隅で窓から空を見つめる


部活の新たなメンバーの歓迎会が終わった所だ


…ビックリしたわ…


桜川ナナ…ちゃんか


何なの…あの女の子…


死者のオーラがすごかったわ


稀に、九死に一生を得た人間からは微弱にオーラが出るけど…


あの女の子はまるで噴き出すみたいにオーラが出ていた


あれは間違い無く、死から蘇った者だ


しかも…あれだけのオーラは…




死神としか考えられないわ


歓迎会の部屋に入った時、思わず声を上げちゃったわ





…私は北条マイコ


私は普通の人間じゃない


死者を導く案内人…


死神なんだ


生命倫理委員会と言う組織に所属してる死神だ


私達委員会の死神は自らのオーラの発生を抑制するアクセサリーを身につけている


だから彼女は私が死神と気が付かなかったんだろう


しかも…抑制するアクセサリーを持つのは委員会だけ…


私達委員会と敵対するテラーは持っていないはずだ


だとしたら…彼女は…


テラーの死神の可能性が高い


…調べる必要がありそうね…


私は職員室に向かう


「桜川さんの住所?」


担任の木村先生に彼女の住所を聞く


ナナちゃんは転校生…まだ木村先生もご丁寧にさんづけか


「また何でだい?」


「あ、えと…今日からウチの部活…朗読部の部員になったんです…だから部活のスケジュールを渡そうと思って」


「ふむ…そうか…なんだ…もう部活に入ったのか…ま、良いだろ!ほら…これが桜川さんの住所だ」


手書きのメモを渡してくれる木村先生


「ありがとうございます!それじゃ失礼します」


ふふん…ま、私も優等生の部類だからね…


チョロいわ♪


「あ、おーい!マイコ!」


職員室のドアから木村先生が顔を出す


「くれぐれもビックリすんなよ♪」


「は?」


「いや、なんでも無い♪じゃあな!」


顔を引っ込める木村先生


…ビックリ?


何だろう?自宅が豪邸なのかな?


私は気にしつつもメモに書かれた住所に向かう


そんなに遠くはないわね




歩いて15分くらいかな…


メモの場所に辿り着く


既に夕方…陽が傾いて…ヒグラシがカナカナと鳴いてる


家の外観を見る


別に普通の家じゃない…


私はインターホンを押す


「はい?どちら様?」


ドア越しから男性の声だわ…お兄ちゃんかしら?


「あ、私北条と言います…えと…」


「北条?…もしかしてマイコちゃん?」


「え?」


何だ?私を知ってる…のか?


「今開けるね〜」


—ガチャリ—


ドアが開く


!!!??!!


「どーしたの?ウチになんか用事?っていうか…良くウチが分かったね?」


「あ…え?え!!?」


な…何でレンジ君がいるの!!?


「どしたの?」


「え…な…何でレンジ君…が…?」.



「何でって…自分の家だし」


???


ちょ…意味が分からないわ!!


先生…間違えたのかしら?


「ふー!サッパリした…!お風呂空いたわよ〜!着替え忘れちったわ♪」


浴室らしき場所から出て来たのは…


ナナちゃん!


ばば!!バスタオル姿!



「え?な…え?」


「ナナちゃん!何て格好で出て来るの!!」


「いやー着替え忘れちゃって…別に見慣れてっから良いでしょ?」


「見慣れてる!!?」


「ナナちゃん!!」


レンジ君が焦りまくる


「あ、お客さん!!イヤだ!」


慌てて隠れるナナちゃん


「あ…えと…これにはね…事情が…」


「事情って…見慣れてるって…言ってたわよね…ハダカ…」


「いや!裸じゃない!裸じゃない!ちょっと!話を聞いてよ!」


レンジ君は私を家の中に引っ張り込む



—コト—


レンジ君がお茶を私を出してくれる


「…ってわけなんだよ…うん…」


リビングであらかたの話を聞いた私


同居…


そんな上手い話があるのかしら?



しかし…本当に…焦ったわ…


完全にこれからエッチでもする状況にしか見えなかったわ…


「ま…まぁ事情は分かったわ…」


「ビックリさせてごめんなさい…」


ペコリと頭を下げるナナちゃん


「あ…ううん…今日はゴメンね…少し体調悪かったからあまりお喋り出来なくて…」


私は歓迎会の事を謝る


あまり話を出来なかったからな…


「あ…ううん!」


ナナちゃんが首を横にブンブン振る


「改めてよろしくね…♪」


私はナナちゃんに握手を求める


「あ…うん…ありがとう…」


ナナちゃんの手を握る


…やはり…死神だ…!人間とは違うエネルギーをビンビン感じるわ


「ま、まぁ…2人とも仲良くなれたし…あ、そうだ!良かったらご飯食べてかない?


レンジ君からの急な夕飯のお誘い


…ふむ…まぁ…このナナちゃんの事をもっと深く知るチャンスかな…


「うーん…じゃあご馳走になっちゃおっかな!」


「うんうん!そうして!コロッケ作りすぎちゃってさ…!」


レンジ君がいそいそと支度を始める


「あ…私も…」


ナナちゃんが手伝おうと席を立とうとする


「あ、ナナちゃんは座ってて?女の子同士お話しててよ!」


「あ…うん…あ、マイコちゃんお茶が無いね」


ナナちゃんがコップにお茶を注いでくれる


レンジ君が夕飯を用意してる間、私は彼女と話す


「いつこっちに来たの?」


「えっと…4、5日前かな…」


最近ね…じゃあこの質問はどうだ


「前は…どこ住んでたの?」


「…!?えと…」


…答えに詰まったわね…そうよね…死者の世界なんて言えないわよね


「えと…!隣町の袖浦町よ!うん!」


「袖浦…ふぅん」


この様子から見るとあてずっぽうに近いわね…隣町が袖浦だって思い出したけね


…やっぱり…死神ね…


「出来たよー!キッチンに来て〜」


レンジ君が私達を呼ぶ


「どうぞどうぞ!座って♪」


他人に食べてもらうのがよっぽど嬉しいのか…レンジ君はご機嫌だ


「アンタ…どんだけコロッケとかメンチカツ作ってんのよ…?山盛りじゃないのよ」


「ナナちゃんが挽肉とジャガイモ買いすぎるからだよ?」


…2人で買い物行ってんの?


……


「さ、どうぞどうぞ!」


レンジ君が再度食べてくれとお願いしてくる


「あ…じゃあいただきま〜す…あら…クリームコロッケね…」


「どう?」


「うん!美味しいわ♪」


彼の作った料理はどれも主婦顔負けの品ばかり…


コロッケだってサクサクしてるし、お味噌汁だってきちんと出汁からちゃんとしてる…


「凄いわ…本当、レンジ君ってお料理の天才ね…!」


「良かった…♪僕ってこれ位しか、取り柄ないからさ」


ニコニコと…嬉しそうなレンジ君



何を言ってるんだ…


レンジ君にはたくさん取り柄がある


その優しい性格


そして…


私を夢中にさせる、その笑顔が…