確かに時間という概念は無いらしい


僕はチエさんの家の窓から外を眺める


夜が無い…


皆の説明では今は人間の世界の時間帯では夜にあたるらしい


しかし、空は昼間の曇り空で灰色のままだ


ふと、僕は思い付く


「あ、あの…少し歩いてきて良いですか?」


エリさんに尋ねる


「そうね…レンジ君ならまだ顔も割れてないし、少し位なら構わないわ…ま、退屈でしょうしね」


エリさんの了解を得て支度をする僕


すると、エリさんは何かを僕に渡す


…小銭入れ?


「こっちでの通貨よ…本当はカードを渡したいけど使ったら私の居所がバレるからね…後はこれを持ってなさい」


もう1つ


小さな機械…引っ張るヒモみたいのがある


「そのヒモを引っ張ればあなたの居場所が私に分かる仕組みよ…ま、防犯ブザーの探知機ってとこね」


「何かあればこれを引っ張れば良いわけですね?」


「えぇ、身の危険が迫ったなら迷わず引きなさい」


「ありがとうございます…あ、ナナちゃんも行く?」


僕はナナちゃんに尋ねる


「いや…私はしばらくパス…チエさんのお料理美味しくて食べ過ぎて動けない…」


ナナちゃんは横になりながらお腹をさすってる


まぁ、たまには単独の行動も良いかな…


僕は1人で外に出る


思ったより、人間の世界とたいして変わらない…


まぁ、空を飛んでる死神がチラホラいるけど…


それと、死神は圧倒的に女性が多い


それくらいだろうか


迷わない程度の範囲で僕は歩く


するとお店があったので入ってみる


「いらっしゃいませー」


雰囲気的にコンビニだろう…


色んな物が売ってる


だけど、人間の世界とは少し違う


見た事の無い食べ物や飲み物が売ってるし…何故だろう…


まぁチエさんの料理を食べたばかりなので僕は何も買わずにお店の中をフラつく


マンガ本もある


僕はパラパラとマンガをめくる


ホント…たいして人間の世界と変わらないな…


いくらか時間が過ぎた頃だろうか


肩をチョンチョンと突つかれる


そして、耳元で囁かれる


「…ダメよ?人間が死者の世界にいちゃ…あなたを連行します」


「!!!」


な…!


ななななっ!!?


こ、こんなに早くバレるなんて…


僕はポケットにあるエリさんの探知機に手を伸ばす


「なんて冗談よ♪驚いた!?」


「え?」


僕は急いで振り向く


「な…まま!…えひぇ!!?」


「ちょっ…何をそんな変な声を上げてるのよ?」


振り向くとそこにいたのは…



マイコちゃんだった


「あ、もしかしてコレ…?えへへ♪」


髪の毛が!?


か、髪型が!!


髪型が変わってる!!!


いわゆるボブカットと言うのだろうか


前髪パッツンでショートになってる!!


「な…なんでまたそんなに短く……」


するとマイコちゃんは指を僕の顔の前で揺らす


「もー鈍いなぁ…私を振ったのは君なんだよ?」


「え…ま、まさか…失恋の…カット…?」


「そーです!!」


膨れっ面をするマイコちゃん


「なんて…まぁ前からボブはやってみたかったんだよねー似合う?」


「あ…うん…なんか…ゴメン…」


「アハハハ♪失恋で、なんてのは冗談よ!心機一転の、つもりで切ったのよ♪」


「あ…うん…似合ってて可愛いよ…♪」


「ありがと♪うれしいな!…あら、ナナちゃんは一緒じゃないの?」


辺りを見回すマイコちゃん


「うん、僕1人だよ」


「そっか…まぁレンジ君なら顔も割れてないから大丈夫か…」


マイコちゃんもエリさんと同じ事を言う


「マイコちゃんは…どうしたの?」


「フツーに買い物よ…で、立ち読みしてるレンジ君を見つけたワケ」


「そーなんだ」


「うん、ナナちゃん達はどうしてるの?」


その質問に僕は今までの経緯を話す


「そうか…チエ…あの人は結構有名だわ…テラーでも1番頭が良いって噂だし」


「そうなの?」


「うん、まぁ変わり者ってのも有名だけどね…そうか…エリさんの同僚か…」


変わり者なんだな…やっぱり


「で、ナナちゃんはお腹が膨れて動けないと?」


「うん…ナナちゃん、痩せの大食いだからさ…」


「アハハハそれって少し羨ましいなぁ…私すぐに太っちゃうからなぁ」


プニプニとお腹を摘まむマイコちゃん


そんな風には見えないけどな


「話変わるけどさ、私達の組織、委員会も今回の件は絡んでるのよね…」


「そうなんだ…」


「あ、場所変えよ?」


話の内容がマズいのか、マイコちゃんは場所を変える事を提案する


僕らは場所を変え、人気の無い場所へ


「私とヒトミさん…2人で調べたけどさ…やっぱり人間の世界を死者の世界に変えようとしてるのよ…テラーと結託してね」


マイコちゃんは難しい顔をする


「少しショックだったわ…お世話になった組織がそんな事を企んでるなんてさ」


「ヒトミさんは何て言ってるの?」


マイコちゃんは空を見つめる


「……エリさんと同盟を組むって…!テラーも委員会も………倒すって…!」


「え…本当に…?」


「うん!だから私達は仲間って訳だね!」


ニコッと笑うマイコちゃん


だけど、その瞳には決意の気持ちが垣間見える


「フフ…なんか…不思議…こないだまで委員会の命令で2人を殺そうとしてたのに…今度は仲間かぁ…」


確かに…それに加えて…ナナちゃんの恋敵だったんだよな…


なんだか、ロールプレイングのゲームみたいに仲間が増えた気持ちだ…


「まぁ今の所は私達は別行動を取るから…でも、その内合流すると思うわ」


「うん…!楽しみにしてるよ!」


マイコちゃんにヒトミさん…


2人が仲間になれば心強いな…!


2人だけとはいえ、仲間が増えるのは心強い…


これが士気が高まる


というヤツだろうか


とにかく…頑張らないと…!