ドンヨリとした空


暑くもなく、寒くもない


境界線を越えた私達はついに死者の世界へと降り立つ


久々のこっちの世界に少し懐かしい気持ちになる


「………!!」


レンジが目を見開いて辺りをキョロキョロと見回す



「どうしたの?レンジ」


「あ…いや…何て言うか…人間の世界とあまり変わりないんだね…」


「うん」


「ふ…普通にお店…コンビニもあるんだね…」


「まぁね〜売ってる物は結構違うけど」


そう


結局、死者だって元々は人間だから暮らしぶりはそう大差ない


違いといえば


時間経過の概念が無い


つまり、昼も夜も四季も無い


死神なんかは特殊な能力を持つ


そしてこちら側…


つまり私達死神の方だけは死者と人間の世界を往来出来る


くらいか…


「レンジ君、トドのつまり人間の世界の裏側と考えた方が良いわね」


エリさんが超簡単な説明をする


「へぇ…じゃあここみたいに日本みたいな場所もあれば中国やアメリカみたいな場所もあるんですか?」


「まさにそう」


「じゃ、日本政府みたいなのもあるんですよね?」


「いえ、無いわ」


「無い…?」


「人間てのは色々欲望や理想なんかあるでしょ?」


う…


なんだか難しい話になってきたわ…


「だから人間というのは対立が生まれ争いが起きるわけ…それを法治するのに政府という物が生まれたわけ」


「つまり…この世界にはそう言った…何でしたッけ?イデオロギーとかが無いんですか?」


「そう、無いの…死神は淡々と任務をこなす…死者は生き返る事が目的みたいなもんだからね…あまり思想なんてのは無いのよ」


「へぇ…でもどうやって法治してるんですか?」


「この世界は私達の組織、テラーの一括統治なのよ…それに対抗してるのが生命倫理委員会…ま、イデオロギーの対立はこの2つだけと考えて構わないわ」


いでおろぎぃ…


アレルギーの仲間みたいだわ…


「あ、あのさエリさん…エリさん堂々と顔晒していて良いの?指名手配されてんでしょ?」


とりあえず、話題をむりくり変える私


「ふむ…確かに良くないわね…ちょっと変装するから一緒に来なさい」


そう告げるとエリさんは私達をある場所へと案内する


「何処に行くんですか?」



「同僚のチエって娘のウチよ」


「同僚…エリさんって同僚いるんだ?」


「あのね、当たり前でしょ?同僚もいない寂しい女だと思ってたわけ?」


「あ、いや…」


「ま、チエは気難しいからね…あなた達は特に話さなくて良いからね?」


気難しい…


エリさんが言うくらいだからな…


相当なもんだろうな…


「あ…あの…エリさん…?」


レンジが恐る恐るエリさんに話し掛ける


「結構ジロジロ見られてますよ僕ら」


た…確かに…!


周りの死神や死者がヒソヒソ特に私達を見ながら何かを話してる…!


「ま、私は第1級の容疑者だしねぇ♪」


「何を嬉しそうに言ってるのよ…とにかく、その同僚の人のとこに早く行かないと…」


「そうね…早歩きで向かうわよ?」


そう告げるとエリさんはかなりのスピードで歩き出す


エリさんの気難しい同僚、チエと言う人の元へ…