何よ…


あんな…胸の小さい女の子が載ってるイヤラシイ本見る位なんだから…


冗談でも…お世辞でも


ナナちゃんが好み…とか言ってよ…!


……まぁ…レンジがそんな事、面と向かって言うはずないわよね…


私は昔を思い出す


あれは…いつだったかしら…


小さい時に良くからかわれていたのよね…


いつも一緒にいるから、アツアツカップルとか夫婦とか…


まぁ私は実のところ悪い気はしなかったんだけど…


私は素直じゃないんだ


からかわれるのが恥ずかしくって、レンジに言っちゃったのよね…


アンタなんか好みじゃないって…


バレンタインのチョコも義理って言い切って、オマケに顔に叩きつけちゃって…


…バカだよなぁ私…


全然可愛くない…


私はベッドに顔をうずめる



……やめよ…!


やめやめ!


こーいう時は別の事をするべきだわ…!


私はノートを取り出す


「…任務…やらなきゃ…!」


私は任務を遂行すべくノートを開き、吟味する


今日の内に1件は処理しよう


…阿部タケル…


私はターゲットを絞り込む


金銭の恐喝、ゆすりたかり…そして、女性への暴行…いわゆるレイプ魔ってヤツか


こんな人間がいるなんて世も末だわ…


時刻は既に夜の12時過ぎ…


私はレンジの部屋に様子を見に行く


ゆっくりとドアを開ける


「zzz…zzz」


グッスリ寝てるわね…


私は部屋に戻る


そして……



「ふぅ…!!」


私は本来の、あるべき力を解放する


一瞬、髪の毛がフワリとなびく


力を解放すると同時に、私の服装も変化する


薄紫のジャケットにフレアのスカート…首には白いスカーフ


「うん…久々だけどバッチリね…!」


姿見で確認をする私


「んしょ…!」


部屋の窓から私は飛び出す


フワフワと浮かぶ私


「さて…ヤツの寝床…いや…資料にはこの時間も良く飲み歩くって書いてあるわね」


資料にはターゲットとなる人物の詳細が載ってる


よし…!ヤツの行きつけの店とやらにいってみるか


私はそのまま空高く舞い上がり、目的の場所に向かう




繁華街…


ヤツの行きつけの店の上空で私は待機する


…ヤツはほぼ毎日この店で毎日遅くまで飲んでから帰宅すると書いてあるわ


私は辛抱強く待つ事に


しかし、私が到着してからものの10分程度でターゲットである阿部タケルが店から出てくる


私は資料に乗っている顔写真と見比べる


確かにヤツだわ!


なんとラッキーな事か


私は上空からヤツを尾行する


どうしようかな…まだ人気があるし、ヤツの自宅に着いてからやるか…


しかし、私はある事に気が付く


阿部タケルの前を歩く女性


OLだろうか…


ヤツは…あのOLの後を尾行している様に感じる


…確かに…ヤツの自宅は別の道を通った方が近いはずだ


私は低空飛行でヤツの尾行を続ける



どれ位歩いたのかしら…?


辺りは人気が無くなり、OLの後ろに阿部タケルが歩いている光景しか見れなくなった


しかし…尾行のやり方…上手いな…そこそこの距離を保って、OLは全く気が付かない様子だ


その時、彼らの歩く道のそばに運動公園が見えた


ヤツがいきなりダッシュを始める


そして、女性を羽交い締めにして公園に引きずり込む


…やっぱりだわ…!乱暴する気だわ!


つーか…凄い手慣れてるわ…!


とにかく、私は急いで現場に向かう


あの女性を助けないと!


私は公園に降り立ち、探す


まぁ分かり安い場所にはいないわよね…


しかし、近くか乱暴激しく揉み合う音がする


あそこね…倉庫みたいな建物の裏から聞こえるわ


私は音がする建物の裏に向かう



「暴れんじゃねぇよ!おら!」


「やめて!離して!いや!」


阿部タケルが女性に馬乗りになっていた


「おい…!これ分かるよな?」


「……!」


ヤツが出したのはかなり大き目なナイフだ


ナイフの刃が月明かりでキラリと光る


女性は目を見開き固まってしまう


「別に刺したって俺は構わねぇんだ…」


ヤツは女性の顔をナイフで撫でる


「う…ぐす……!うっ…!」


女性は観念してしまったのか、泣きながらグッタリとして動かなくなる


「そうだな…そうしてりゃ良いんだ…さてと…♪」


ヤツは女性の胸を乱暴に触りながらスカートをたくし上げる


そろそろ行くか…


「ちょっと…オジさん?」


私が急に話しかけたもんだから大袈裟に驚く阿部タケル


「な…何だ!」


「乱暴は良くないわね…」


「何だてめえ!!」


ヤツは何故かズボンを降ろしかけていたので慌てて履きながら私を威嚇する


「殺すぞクソガキ!な…なんなんだてめえは!」


まぁなんというか…下品な言葉を吐くヤツは顔も下品ね


姿格好はきちんとしてるけど、やっぱり顔に出るのね


「いや…ズボン履きながら言われても迫力無いわ…」


「うるせぇ!…このガキが…!殺されたくなかったら失せろ!」


「イヤよ」


私は即答する


「な…!」


ヤツから見れば私はただの子供


私が全く怯まない様子を見て驚く


「な…う…失せねぇと殺すぞ!」


「…殺されるのは……あなたよ」





そう…私はヤツを…


殺しに来たんだ


「な…なんなんだてめぇは!」


「…あなたの命…もらいに来たの」


そう…私は…ただ生き返ったわけじゃない


私はヤツに言い放つ




「私はね……死神なのよ」



私は…


死神となる契約を交わし、それと引き換えに生き返ったんだ


私は死神となり、命を狩る役目を負っている


私は死神の組織、[テラー]と言う組織に属する


しかし、本来の死神は寿命を終えたり、不慮の事故で亡くなった人間を死者の世界に導くのが役目


狩ると言うのは語弊がある


死者を導く案内人と言った方がしっくりくる


だが、私は違う


私は悪人を狩る特殊な死神


しかし、むやみやたらに悪人を狩るわけじゃない


世界には悪人がいると同時に、いわゆる正義の人もいる


正義の人は何故正義か


それは悪と戦い、そして勝つ為に行動するからだ


つまり、悪人も一定の数は必要なんだ


世界の調和を保つにはバランス良く両方が存在しなきゃいけないんだ


だけど…そのバランスを保つの非常に難しい


時として悪人が必要以上に増殖する事もある


人はどちらかと言えば悪に流れる気質もあるしね


その増えすぎた悪によって本来未来で悪に対抗する存在となる人が殺されてしまったり、人生を台無しにされてしまう事がある


悪に対抗する人だけじゃない


例えば医学で人類に貢献する人とか


まぁ様々だ


そんな人達が、予定外の悪によって滅ぼされてしまう


更にバランスが崩れてしまうんだ


だから…私達は予定外の悪の存在を強制的に排除する役目を負った…


テラーの組織の中にある、強制執行部隊
と言う集団


通称[ハンター]


死神でも戦闘を主に訓練してきた、戦う死神だ


「し…死神?くっ…くはは!なんだ…頭のおかしいガキか…」


ヤツはやれやれと言った感じで笑う


「くそ…とにかく今日はヤメだ…おら…とっととどっかに失せろ」


私にナイフを向けながら余裕の表情の阿部タケル


「イヤって言ってるでしょ?」


「おい…これがわかんねぇのか!あ?」


ヤツはナイフを私に突き出す


「フン…やってみなさいよ?女の子とか弱い人間にしか威張れないクセに…しかも、人なんか殺した事無いでしょ?」


私の持ってる資料にはヤツの詳しい罪状も記載されている


ヤツは強姦、脅迫、詐欺、暴行はあるが殺人は無い


「う…うるせぇ!マジでぶっ殺すぞ!」


「はぁ…殺す殺すって言うならさっさとしなさいよ…威勢だけなの?」


「このクソガキ…!オラァ!」


ヤツはナイフを振り回す


まぁ当たらない距離だけど


「だから…当てなきゃ殺せないわよ?」


「な…なんなんだ…コイツ!」


そして、ようやく腹を決めたのか、ヤツはナイフを持って突進してくる


「よっと♪」


私はヤツの突進をかわす


ヤツは勢い余って盛大に転ぶ


「く…くそ!」


「まぁ…あなたがやる気出さないとこっちも武器出しづらいからねぇ…」


私は武器を取り出す


「な…!?」


ヤツは私の武器を見て大層驚く


ま、驚くのも無理は無い


刀を私は取り出したんだ


まぁ死神ってのは鎌が定番なんだけど、武器は様々ある


私はエリさんから刀の修行を受けた


もちろん、鎌だって使えるけど


ちなみに、私の刀は見てくれは日本刀だけど鞘はピンクで中央にハートマークが小さく施してある


お気に入りなんだ♪


「そ…そんなオモチャで…!」


「オモチャじゃないわよ?」


私はそばにある木で出来た柵の支柱


茂みに行かない様にする為の物だろう


—スパン!—


その支柱を私は切ってみせた


カランと落ちる支柱


「切れ味抜群なんだから♪」


「……!」


ヤツは驚きを隠せない


「う…うおおおおお!」


ヤツはヤケになったのか、また私にナイフを持って突進してくる


「よっと♪フン!!」


—バキィ!!—


もちろん、私はヤツの突進をかわして脇腹に重たい一撃を加える


「うがあ!!…あ…うぐっ!」


刀の峰だから切ってはいないけど、ヤツには充分過ぎるほど効いたみたいだ


ヤツは地面に倒れこみ、脇腹を抱え痛がる


「あ…!うぐ…!い…痛ぇ…!」


「当たり前でしょ?刀って結構重いんだから…それに、私は最初から骨を折るつもりでやったんだから」


「ち…ちょ…!ま…マジ骨が…だから…」


「だから何よ?」


「た…助け…て…」


「イヤ」


私はヤツの命乞いを拒否する


「あなた…そうやって助けてってお願いした女の子を何人乱暴したの?…ふざけんじゃないわよ」


「い…いや…きき!今日が初めてだから!」


この後に及んで嘘を吐くか…なら


「阿部タケル、あなたの罪状を読み上げてやるわ…」


私は資料に目を通しながらヤツの罪状を日時、場所も含めて細かく読み上げていく


ヤツは段々と顔が青ざめていく


まぁヤツにとっては夢でもみている心地だろう


悪夢をね


そして、私はヤツに告げる


「以上の罪を踏まえて、お前に対する情状酌量の余地は全く無い…お前の行いで人生を台無しにした者、精神的に病んでしまった者が多数いる事も踏まえて…阿部タケル、お前は死刑に処す」


「そ…そんな…ちょ…!た…助けて!」


「だから、情状酌量は無いのよ?」


「う…うあ…!」


ヤツは地面を這いつくばって逃げ出す


私はヤツの背中を思い切り踏み付ける


そしてヤツの顔のそばに刀を突き立てる


「逃げんじゃ…無いわよ…!」


私はヤツを見下ろす


「ま、刀で魂を切り離すけど痛みは無いわ…良かったわね…」


そして私は刀を阿部タケルの体に振る


グッタリと動かなくなる


阿部タケルの体からゆっくりと出てくる魂


キラキラと光り輝いている


「生きてる時はロクでも無い事ばかりしてたのに…魂ってのは誰でもキレイなのね」


魂はゆっくりと天高く舞い上がっていく


「今度は良い行い、しなさいよ〜」


やがて魂が見えなくなる


「ふぅ…!」


私は1つ、大きく息を吐いた…