……


父さんが肩を震わせて泣いてる


黒い服を着ている


周りは親戚や…マコ姉ぇもいる


マコ姉ぇも泣いてる


「…お母さん、起きないね」


幼少の僕


母親が病気で死んだという事が理解出来ない


「…お母さんは…起きないんだ」


目を真っ赤にして、父さんは僕にそう告げる


まだ…僕は、3歳くらいか


母さんの死を理解するほど成長はしていない


でも、父さんは言った


「お母さんはね、死んじゃったんだ…」


「死んじゃった?」


普通なら


これから母さんはお星様になるとか


そんな言葉で濁すだろう


でも、父さんは違った


誤魔化す事無く、幼い僕に真実を告げた


「もう、会えないんだ…お母さんとはもうお別れなんだ」


声を震わせて、涙を流し、父さんは僕を見つめながらそう言った


母さんは元々病気じゃなかった


むしろ、男の父さんよりも元気で…


父さんを明るく支える


そんな人だった


そう


まるで、今のナナちゃんみたいな人


仕事で失敗した父さん


そんな時、落ち込む父さんを


(何しょぼくれてんのよ?男でしょ?次に成功してやんなさいよ!?)


(クビになったら?そーしたら私が仕事してアンタとレンジを養ってやるわよ♪)


(私がいる…だから…2人…ううん、私とアンタとレンジ、3人で頑張ろ!?)


良くこんな風に父さんを励ましていた


母さんは唐突に死んだ


くも膜下出血で


あまりに唐突な死


残された父さんと僕


母さんが死んだ後


何年かして、父さんは再婚を考えていた


だけど結局しなかった


何故かはわからない


だけど、1度父さんは言った


「俺は母さん以外は無理なんだ」


って…


純愛なんだろうか


父さんは幼い僕に尋ねた


「レンジはどんな人と付き合いたいんだ?」


「付き合う?んー分かんない」


小さな僕にはその質問は良く分からなかった


「ナナちゃんか?」


「ナナちゃん?良くわかんないよお父さん…」


「そうだな…結婚したい人だ」


まだナナちゃんに恋心が芽生える前の事


「結婚…んーだったらナナちゃんかなぁ」


恋心は無かったものの、僕はそう答えた


「ナナちゃんか…そうか…あの娘ならなぁ…」


父さんもナナちゃんの事は知ってる


ナナちゃんなら


そう呟いたきり、父さんは何も言わなかった


僕は……


理想の人と恋人になれたのか


いや…


違う…


理想の恋人にならないといけない


ナナちゃんと2人で…


2人で…