「エリさん!」


私は慌てて1階に降りる


のんびりと紅茶を飲んでるエリさん


まるで自宅の主の様だ


「何?もう済んだの?スケベな事は…」


「んだー!違うっての!れ、レンジが…早く!」


「レンジ君…ふむ…分かったわ」


エリさんと一緒に2階に駆け上がる


「レンジ!」


レンジは横になったまま、既に気を失っていた…


「ちょ…エリさん!どうしよう!」


「慌てないの…」


エリさんはレンジの額に手を当てる


「…触ってみなさい」


「え…あ…うん」


私はレンジの額を触る


「……?冷たい!?」


「…死人の冷たさね…」


「ちょっと!レンジ死んじゃったの?」


「違うわ」


違う…?


私にとっては意味が分からない


「どんな愛の時間を過ごしたかは分からないけど…今、レンジ君は死神に覚醒しつつあるわ」


覚醒…


やっぱり…そうだったのか…


「どんな事したの?」


エリさんが質問してくる


「えと…普通にお話をしてて…そしたら…レンジが急に…私に…いなくなったらイヤだよって…」


「ふむ…」


「あんなレンジ、初めてだった…甘えんぼっていうか…私を頼ってくれるっていうか…」


「で、あなたはどうしたの?」


「膝枕してたから…そのまま抱き締めてあげた…なんか…そうしてあげたかったから…」


「…そう…」


エリさんは深く考える


「…あなたが、レンジ君の正直な気持ちに、正直な気持ちで応えた…愛情を持って…だからかもしれないわ」


「良く分かんないけど…これで良かったの?」


「恐らく…今はレンジ君の肉体が死神と普通の人間の狭間を行き来してる状態ね…」


「死神と人間の狭間?」


「あなたの深い愛情が、彼の内なる力、カルマの力を呼び覚ましたのよ」


「うん…」


しかし、体は冷たいって言っても凄い汗だ…


しかも苦しそうに眉間にシワを寄せて息が荒い…


「ね、ねぇ…苦しそうだよ?」


苦しそうにしてるレンジを見ているだけの私にとっては耐えられない


「今、彼は戦っているのよ…生きながらにして死神の力に覚醒するっていう、前例の無い大仕事をしているの」


「う…うん…」


このまま…


見守るしかないのか…


苦しそうなレンジを見つめながら私は考える


「…んしょ…」


「ナナ?」


私はまた、レンジを膝枕する


「…フフ…そうね…そうしなさい…必ずレンジ君は目を覚ますわ」




私はレンジの頭をそっと撫でる


それしか…


今は出来ない…