「お、お前なのか?湖を涸らしたのは……。」

「それが如何したというのだ?戻して欲しいのか?叶えてやったもいいぞ。

このオレを倒せるのならな。」

自信の満ち溢れた口調で魔物は言った。

「ダイチ、援護を頼む……。」

サクラの口は震えていた。

恐怖がもうそこまできている。

それはまたダイチも同じだった。

サクラは恐怖心を押さえ、剣をグッと握った。

地面を蹴り、魔物へ向かって、剣を振りかぶった。

攻撃は魔物の首にあたった。

「ぐ、ぐは……。」

その声の主はダイチだった。

サクラは後ろ見た。そこには、倒れたダイチがいた。

それだけでは、確かに首に切りかかったはずの傷は無い。

「口ほどにもないわい。」

恐怖はすでに通り越していた。

逃げることも出来きなければ、攻撃することも出来ない。

蛇に睨まれた蛙のごとく――。

「サクラ……」

ダイチはそれだけ言って、意識すら失ってしまった。

サクラは何も出来なかった。

怖い、恐ろしい、でも悔しい、そして憎い。

卑しい魔物を如何することも出来ない。

目を閉じた。禍々しい、オーラだ。

目を閉じても感じられる。

目の前にそれがいるかのように……。

すぅーっと流れる清いオーラが流れてきた。

風だ。すっーっと言う音はごぉーっと言う音に変わった。

目を開くと、村に戻っていた。

「おじさん!!!ここは……」

「私の家だ。風の神様が、あなたたちをここに……」

これもまたイベントなのか?

まだ手にはさっきまでの恐怖があった。

思うとダイチの事が気になった。

「おじさん、ダイチは?いや、えっと、一緒にいた男は?」

「あの子なら外にいるよ。」

サクラは慌てて、扉を開けた。

前に階段があった。どうやら2階かそれ以上の階だろう。

急いで階段を下りていった。すると真っ直ぐと廊下があった。

フローリングは古くキシキシと音は鳴っていたが、

かまわず走った。三つほどの扉を横切ると玄関についた。

扉を勢い良く、開くとダイチがいた。

「ダイチ!!!」