リミット



***

早く教室に戻らなきゃ…。


でも、行きたくない。


誰にも会いたくない。


ここから出たら、優先輩とばったり会ってしまうかもしれない。


「和子?いるか?」


静かにドアが開く音がして、名前を呼ばれる。


「いち君…なんで…」


「どうしたんだよ?!何かあったのか?」


なんでこのタイミングで来るかなぁ…。


「帰ってこないから心配してたぞ」


「ごめん…」


「なんかあったのか?」


横に座って、そう聞かれる。


私は首を横に振った。


いち君に言うのは間違ってるよね。


「…先輩?」


「えっ」


なんで…。


「だいたい予想つくよ」


表情から読み取ったのか、いち君は続けて言う。


「…わかってるなら、ほっといて」


いち君に甘えるのも違う。


「なぁ、俺にしろよ」


「なに言ってるの」


「俺だったら、和子を泣かせない」


「……」


それでも…、私は優先輩が…


「俺を好きになって」


いち君が、私を抱きしめた。


「離して…」


「いやだ」