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早く教室に戻らなきゃ…。
でも、行きたくない。
誰にも会いたくない。
ここから出たら、優先輩とばったり会ってしまうかもしれない。
「和子?いるか?」
静かにドアが開く音がして、名前を呼ばれる。
「いち君…なんで…」
「どうしたんだよ?!何かあったのか?」
なんでこのタイミングで来るかなぁ…。
「帰ってこないから心配してたぞ」
「ごめん…」
「なんかあったのか?」
横に座って、そう聞かれる。
私は首を横に振った。
いち君に言うのは間違ってるよね。
「…先輩?」
「えっ」
なんで…。
「だいたい予想つくよ」
表情から読み取ったのか、いち君は続けて言う。
「…わかってるなら、ほっといて」
いち君に甘えるのも違う。
「なぁ、俺にしろよ」
「なに言ってるの」
「俺だったら、和子を泣かせない」
「……」
それでも…、私は優先輩が…
「俺を好きになって」
いち君が、私を抱きしめた。
「離して…」
「いやだ」


