リミット



なんで私、やめたんだろ…。


別によかったよね。


でも、迷惑かもしれないと思った。


目を向けると、2人はまだ何か話している。


仕方ない。先に荷物を置いてこよう。


そう思って歩き出そうとして、


だけど体が固まった。


後ろ姿の優先輩が、少しかがんだ。


話していた女の人は、少し背伸びをした。




え、キス、して……


嘘、だ


なにかの間違いだよ…ね





ううん。彼女がいてもおかしくない。


私が信じたくないだけ。


嘘だ


嘘だ


嘘であって


でも、疑う隙がない。


今、目の前で、キス…した。


「…っ」


急いで空き教室に入った。


扉を閉めて、座り込んだ。


…見なければよかった。


見たくなかった。


まだ、恋をしていたかった。


優先輩を、好きでいたかった。