〜和子side〜
「ごめん。突然…」
優先輩はそう言って、ゆっくりと手を離した。
離れちゃった…。
謝らなくていいです。とは言えなかった。
どうして手を?って聞きたいけど、返事が怖くて聞けない。
「いえ…」
私はそれだけ答えた。
優先輩の手の熱が、まだ微かに残っている手を握り締めた。
「彼…大丈夫?」
「いち君ですか?…多分大丈夫です」
「いち君…?そういえばさっきもそう呼んでたね」
先輩は不思議そうな顔をした。
「小さい頃、“はじめ”って読めなかったんです。そのまま、“いち”って読んでました」
「あぁ」
先輩は納得したように声を上げて、笑った。


