「先輩の名前聞いてもいいですか?」
「俺は羽柴優。優しいって字で、ゆう」
なんだか妙にしっくりきて、思わずなるほど、と納得してしまう。
“名は体を表す”が分かったような気がした。
「かっこいいですね」
「そう?ありがとう」
優先輩の隣にいるのは心地よくて、話をしているのが楽しい。
初対面の人とこんなにも自然と話して、胸を高鳴らせるのは初めて経験だった。
「ありがとうごさいました」
資料室まで案内してもらい、改めて優先輩に頭を下げた。
「いいよ、気にしないで。じゃあね」
先輩はニッコリと笑い、ひらひらと手を振りながら行ってしまった。
もっと関わりたかった、もっと話したかった。
でも、なんの接点もない先輩に願うのは無謀なことだろうな、と頭の片隅で分かっていた。


