帰りのホームルームを待つだけの空白の時間を有効活用して、劇の内容や役割分担を実行委員の2人がクラスメイトに説明していく。
配役は実行委員の指名で決めていくことになり、決定権を持つ春ちゃんの視線が自分に向いたことに、私は思わず逃げ出したくなった。
「アニー役は和子ね!」
「嫌だ!なんで!」
「衣装買ったんだけど、間違えて小さいサイズのものを買っちゃったの。和子しか着れる人いないんだよ、お願い!」
「え…私だって着れないかもしれないでしょ」
「返事は着てみてから聞きまーす。はい、着替えてきて!」
残念ながら、衣装は私にピッタリのサイズだった。
「サイズだけじゃないのよ、和子は記憶力いい方でしょ」
「歴史ならね…」
そんなこんなで私はアニー役に決定した。
(劇って毎年やりたいクラスが多くて争奪戦なんだよね…その主役なんて務まるかな…)
今までにない出来事に、不安と緊張がすでに押し寄せていた。


